頂き物・捧げ物

□保護者の管理不届き者
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明日に控えた一大イベント。
それはいつやるのか、なんて大分前にわかっていたことだ。

朝学校について席につけばいつもと一風変わっている。
配られたプリントを枕にして私は睡眠をとろうと机に突っ伏した。



「おい」
「何」
「起きろ」
「やだ」
「ちゃんとやるのだよ」
「高尾くん遊ぼー」
「おい!」
「痛いっ」



振り替えれば手に握られている今日のラッキーアイテム“うちわ”
叩かれたのは面でではない、横だ。

なかなか痛い。



「さっさとやるのだよ」
「はーい」



そう、明日に控えている一大イベントとは体育祭でも文化祭でも無い。
中間テストだ。

毎朝やるプリントとは違い、“テスト対策プリント”とかかれた紙が今私の目の前にある。
正直言おう。
やる気は無い。



「真ちゃん真ちゃん」
「うるさい、その呼び方はやめろと何度も…」
「数学わかんない」
「…はぁ」



「後で教えてやる」
それだけ言って真太郎はプリントに取りかかる。
私は最初の5問と一番最後をちょろちょろ書いて今日の3限に提出するプリントを始めた。

15分くらいして先生から回収の合図がかかり、後ろから回ってくるプリント。
私の後ろである真太郎のプリントは見事に全て埋まってて。
おまけに赤丸がいっぱい。



「高尾くん、私めげそうなのだよ」
「そうか、頑張るのだよ」
「わかった、頑張るのだよ」
「わかればいいのだよ」
「なのだよ」
「なのだよなのだよ煩いのだよ!!」
「あでっ」
「いたっ」



ラッキーアイテム“うちわ”の餌食になったのは私と高尾くん。
今日のラッキーアイテムが“トンカチ”じゃなくてよかった、ホントに。

「ラッキーアイテム粗末にしちゃだめだよ」と言えばハッとなってうちわを見つめ、それからムッとしながら私を見る。



「お前が悪いのだよ」
「はいはい」
「ふんっ」
「連絡三点、ちゃんと聞いとけよー」



ざわついていた教室が先生の一声で静かになった。
委員会があるだとか現国の課題未提出者だとか明日からテストだとか。

そんなありきたりな業務連絡を右から左へと聞き流し、一時間目にある数学を憂鬱に思っていた。

今日は三時間目に体育あるし。
現国は寝れば本日は4時間授業なわけだ。



「おい」
「?何?」
「…放課後に教えてやる」
「…何を?」
「………」
「…数学!数学だ!」



「帰ったら許さん…」とでも言いたげに舌打ちをしながら頭を押さえていた。
彼女に舌打ちってヒドクナイデスカ。

そんなこんなで一時間目が始まりまして。
数学は成績で分けられていて、上のクラスと下がある。

真太郎のスパルタが効いたのか、私もギリギリ上のクラスに仲間入りした。
そんなわけで真太郎とは席が離れるわけでして。

授業開始20分で先生がプリントを取りに職員室へ行った。
生徒は話したり問題を解いたり。
無論、真太郎は後者だ。



「…シャッターチャンスッ」



極々小さな音がピロンッと鳴り、盗撮完了。
先生が戻ってきたので携帯もしまった。
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