頂き物・捧げ物

□嘘つき
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一人きりでいる図書室は静かすぎて気味が悪い。
委員会の仕事で業後、本の整理に来た。
今週は私が当番だ。
整理は業後すぐに始めたはずなのに気付けば日は暮れていた。

かつてない程の箱の中の本の量を見る。
そこから昨日の当番の人がサボったことが見てとれた。



「仕事ぐらいしてほしいわ…。だいたいホントに読むのかな、この本」



手に取ったのは宮沢賢治の“注文の多い料理店”だった。
小学生の時、確か教科書に載っていた気がする。

表紙はすでに年期が入っていて茶色く色褪せていた。
ペラペラと中を見ると内容は教科書と同じで。
懐かしく感じながらも仕事の為にそれを閉じる。

後ろで扉が開く音がして振り替える。



「何しとん?」
「あ、」
「全然来ぇへんから心配したわ」
「してないくせに」
「んー?」



「何か言うた?」なんて、聞こえてるくせに。
部活が終わったのかもうすでに制服に着替えていて、肩にはエナメルが。



「まだかかりますよ、仕事」
「そんなんほったらかして帰ったらええやん」
「ダメです。仕事ですから」
「皆サボってるんやろ?」
「だからって私までサボったら誰もやらなくなるじゃないですか」
「明日したらええやん」



なぁーなぁー、と机に頬杖をついて本をペラペラしながら言う。

いつの間に持って行ったのか夏目漱石の“こころ”のページを繰る。



「それちゃんと元に戻してくださいね」
「え、そこでええの?」



指差した先は【返却box】とかかれた箱。
…この人返却boxから持っていったな。



「ちょっと、仕事増やさないでくださいよ」
「元の場所に返せばええんやろ?」
「どこに返すつもりですか?」
「そこの箱」
「…はぁ」



頼むからジッとしていて欲しい。
この人が来るとろくなことがない。

いたずらばかりされる。



「せやから今日はおとなしゅうしとるやん」
「勝手に人の心読まないでください」
「飽きたわこの本。返しといて」
「もう!」
「次どれにしよ…いたっ」



渡された本で頭を叩いてやった。
今度は本棚に向かうもんだからホントに仕事を増やされる気がしてきた。

そのまま無視してどこから持ってきたのか大判の図鑑だか何だかを2つ。
机にドサッと置かれた音も無視して本を戻して行く。
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