頂き物・捧げ物

□東京、某日、マジバにて
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最近あったことと言えば…何だろうか、と黒子は考えていたが何も思い浮かばなかった。
「火神とかやらかしそうじゃん?」とワクワクした面持ちで聞かれ、何かあったかとまた記憶の引き出しを開け、面白そうなものを探す。

どうやら見つかったようで、「そう言えば」と視線を高尾に戻すと、高尾は食べるのをやめて話に聞き入る体制をとった。



「火神くん、帰国子女なんです」
「え、マジ?」
「なのに英語のテストが酷いんです」
「うわー、マジかよ勿体ねぇ」
「この間、英語のテストがあったんですが、お腹が痛かったみたいで。彼女は何故rest roomを探していたんですか?という問いに『腹が痛いから』って書いてました」
「なんだよそれ」
「その次の、『彼はなぜ、パーティに出席できなかったのですか?』にも『腹が痛いから』、『彼が会議に遅れてきたのは?』にも『腹が痛いから』。しまいには『 このニュースはJaneの何についてのニュースですか?』にも『腹が痛くて舞台を休んだから』って書いてて先生に『トイレ、行く?』ってテストに書かれてましたね」
「本能の赴くままに行動してんの?あいつ」



高尾は小さくクスクス笑いながら黒子に問い、ハンバーガーをかじる。
「馬鹿なんです、彼は」と言う言葉にまたクスクス笑っていた。

「それから、」と黒子がまた口を開くと興味津々に高尾はその話に食いついた。



「世界で一番長い川のところに『津川』、世界で一番高い山に『富士山』と書いていました」
「…アイツ視野狭くね?」
「カントクや日向先輩にみっちりしぼられてました」
「だろうね!」



そう言って笑いだした高尾にむけて黒子も微笑み返すと、誰かが高尾の襟を後ろへと引き首を締めた。
そんなことをするのはいったい誰だろう、腕を辿っていくと苦虫を噛み潰したような顔には眼鏡がかかっている。
トレードマークの緑色の髪の毛が心なしかゆらゆら揺れて、それが怒りを表しているかのようだった。

緑間は、「緑間くん」と黒子が呼ぶのを無視して高尾の隣へと腰をおろす。



「あっれ、何してんの?珍しい」
「お前が中に居るのが見えたからな。店内を騒がしくして迷惑をかけるな」
「いつから俺の保護者になっちゃったのよ」
「火神もいるぞ」
「え、ホントに?」



言うが早いが席を立ち上がりキョロキョロと店内を見渡す高尾は直ぐに火神を見つけて名前を叫ぶ。
慌てて走ってきた火神のトレイの上に乗るハンバーガーの量を見て高尾は再び笑いだした。

勿論黒子は想定内でそのままでいたのだが、お好み焼き屋以来の飲食店での再開な為、思いっきり顔をひきつらせていた。



「相変わらず食うねぇ、火神」
「あ?そうか?」
「夕食にそれか。体に良くないぞ火神」
「はぁ?ちげぇよ、買い食いだよ買い食い」
「…マジ?」
「信じられん…」



そう言いながら緑間は額に手をやってため息をついた。
流石の高尾も言葉が出ないようで、ポカンとしている。

しばらく四人で話をしていたのだが高尾が立ち上がり、それに合わせて緑間も帰っていった。
黒子は火神に付き合う為にまだ残っている。



「あー、笑った笑った」
「ふん、迷惑にも程があるのだよ」
「そういえば、何で俺見つけてマジバ来たの?何か用?」
「…宮地さんが怒っているとだけ伝えようと思っただけだ」
「…嘘!?何で!?え、マジ!?」
「連絡がつかんと怒っていたのだよ」
「は や く 言 え よ!!」



慌てて携帯を出して開いてみると着信が15件、メール20件と表示されており、しかもそれがすべて宮地からの連絡だった。
慌てて電話をして謝ろうと通話ボタンを押すと、直ぐに出た。

しかし。



「あ、もしもし宮地さ−−−−−」
『轢く』
ブツッ ツー ツー ツー…
「…ヤバ」



結局翌日、間違えて宮地のシューズを持って帰っていた高尾はきっちりしぼられた。
何故電話に気が付かなかったかを聞かれて正直に話をすると再び怒られた。

勿論、緑間はそんなことは完全無視でシュート練習に打ち込んでいて気にもしていない。
高尾は泣く泣く外周へと向かった。





(お前もっと早く言えよ!!)
(何がだ)
(雑談せずにもっと早く教えてくれたらよかっただろ!?)
(俺にそんな義務はない)
(…ねぇ真ちゃん、道徳って知ってる?)
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