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□バレンタイン
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暫くまた勉強を続けていると涼太はまたチラチラとこちらに目配らせをしてくる。



「何」
「…何もっス」
「………」
「………」
「…何よ」
「…何も」



何回も何回もこのやり取りを続けている。
それでもそわそわし続ける涼太。

…本当はわかってるんだ。
私はまだバレンタインなのにも関わらず涼太に何も渡していない。
多分それで、そわそわしているんだろう。

だけどなぜか恥ずかしさから渡せないでいる私はどう切り出せばいいかわからない。



「…あのさ、」
「な、何…?」
「俺に―――――」



その瞬間、教室の扉を誰かが開いた。
同じクラスの女子だ。

「忘れ物しちゃった」と言いながら私に笑いかける彼女はどうやらバレンタインのお菓子を教室に忘れていったようで。

直ぐに教室から出ていったので私は勉強を再開させる。



「…あぁあぁぁあぁ!!!!!」
「!?ちょ、何!?」
「何でなんスかぁ!!」
「は、はぁ!?」
「もぉおぉぉおぉ!!」



机をダンダン叩きながら足をバタバタさせる。
驚いて立ち上がる私をチラッと見上げる。

その少しだけ目を潤ませた瞳はじっと私を見つめた。
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