黒バス/長編/今吉 T

□第10話
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部活が始まり体育館は一気に熱気が籠り始めた。
なかなか暑い。
暑いと頭が痛くなってくるのが私の憎める体質だ。
暫く我慢していたもののやっぱり頭が痛くなってきた。



「あづー…」
「名前大丈夫?」
「仕方ないよさつきだって暑いでしょ」
「違うよ体調!」
「…ちょっくら外の空気吸ってきます、ついでにスポドリ作ってきます」
「ゆっくりでいいよ!」



そう叫ぶ声が聞こえてきたからヒラヒラと手をふって体育館を出た。
さつきは情報の収集とかで忙しいからこれは私の仕事。

スポドリを作っていれば知らない男子が横を通った。



「でか」



…言うと思った。
そりゃ大きいけどさ。
いちいち騒がなくてもいいじゃない。

「俺とこんなに違うー」とか言って後ろで囃し立てるバカ共、足が短くなってしまえ。



「アンタらが小さいのが悪いんだってば、短足…。短足のくせに腰パンすんなあぁあぁぁあぁあ」



男子生徒がいなくなってから小さく呟きながらスポドリ容器を振る。

だいたい背が低いのが悪いんだってば。
175くらい越えてみなさいって話だよ



「何してんだよお前」
「…大輝、大輝はいい子だね」
「は?」
「私より大きいから」
「…またその話かよ」



鼻で笑って頭をグリグリされる。
…痛い。
見上げないと視線は交わらないくらいに大輝は背が高い。



「大輝ー」
「んだよ」
「どうしたら縮むかな」
「ばあちゃんになったら縮むだろ」
「それじゃ遅いのー」



「アンタみたいな身長の人ばっかならいいのにさー」
そう言いながら大輝の胸板を叩く。

聞いてるのか聞いてないのかわからないけど「あーはいはい」なんて言いながらそっぽを向いて適当に返事をしていた。



「?お前大丈夫か」
「頭の話してたら殴るよ」
「頭は頭だけど…頭痛だよ頭痛」
「大丈夫大丈夫」



そんなに酷くない頭痛に気づく辺りやっぱり幼馴染みだと思う。






「じゃあよ」
「あーい、ばいばい」



もう一回頭をグリグリしてから歩いていく。
大輝は190越えだから私より高い。

その背中を見届けながら小さくため息をついた。
いいもん、バスケ部の先輩はみんな私より高いもん。

スポドリを作り終えてその場にしゃがみこんだ。



「うー…」
「名字?」
「?…あ」
「何してんねん」



先輩がいた。
…やばい。
だんだん近くに寄ってくるのに私は立ちくらみがして立てなかった。

ついに先輩が私のところに到着した。



「す、すみません!!あの、サボった訳じゃ…」
「具合、悪いんか?」
「…生きてます!!」
「否定せぇへんいうことは体調悪いんやな」
「うっ…」
「図星や」



そう言いながら水道水で顔を洗う。
やっと立ち上がり先輩の後ろに立った。

タオルで顔を拭き、もうひとつ手に持っていたタオルを水で濡らし始める。



「桃井に聞いた」
「?」
「暑いの苦手やったら何で先言わんねん」
「いや、甘ったれたこと言ってられないなぁと…」
「アホか」
「わっ」



タオルを投げつけられて顔面キャッチ。
その顔面キャッチしたタオルは冷たかった。

顔からはずして綺麗にたたんで返した。



「アホか」
「はい?」



せっかくたたんだタオルを広げて私の首にかけてぐるぐる巻きにした。
首がすごく冷たい。

先輩を見れば巻き終わってすぐまた顔を洗っていた。



「それしてたら涼しなるから、な?」
「…すみません」
「かまへんよ」



顔を洗い終わったのか、もとから首にかけていたタオルで顔を拭いてスポドリのカゴを2つとも持ち上げた。

さすがにまずい。
勝手に休んだあげくタオルも借りて、しかもスポドリまで。



「せんぱ―――」
「休んどき。主将命令」
「………」
「体育館横で涼んでよーなったらおいで」
「…はい」
「無理してやったら桃井に心配されるで?桃井だけと違うけど」



それだけ言っていなくなる先輩。
体育館の横に行き座る。
首にかかっているタオルが冷たかった。
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