黒バス/長編/今吉 T

□第9話
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教室に戻れば大輝はまだ笑いながら弁当を食べていて、さつきはそれを叱りながら弁当を食べていた。
大輝が食べているのは私の弁当。
今度は私が叩いてやった。



「いって!!何すんだよ」
「何すんだよじゃないわ何人の弁当食べてんの!!」
「いいだろ別に」
「良くないわ返せ!!」



ヘッドロックをかけてやってもガン無視。
まだ箸を進めようとするからきつく閉めてやればやっと食べるのを止めた。



「バカ、苦しいから締めるな」
「じゃあ返せ」
「ヘッドロックは止めなくてもよかったけどな」
「は?」
「胸がちょうど―――」
「黙れぇえぇぇえぇ!!!!!」
「いてっ!!」



頭をグーでグリグリしてやれば火がついたのか、意地でも弁当を食ってやろうと箸を進める。
もう半分以上無い。



「昼御飯…」
「心配すんな。…良ー、購買行ってこい」
「す、すみません!!」
「アンタが行け!!」



さつきはそんな桜井くんを引き留めていて、私は未だに大輝とギャーギャー言い合う。
しだいに大輝は飽きたのか私を相手にせず、意識を弁当へ。

桜井くんを断って自分で購買へ。
手には大輝の鞄を漁って拝借した財布を持って。

購買にはもう少しの生徒しかいなかった。
適当に選んでいれば、いつぞやの緑色の不味いパンが。
50円なのか、安いな。

大輝のお金だし、2つ買ってって無理やり食わせてやる。
会計を済ませて袋を片手に階段を上がる。
若干袋を振り回しながら階段を上がれば後ろから名前を呼ぶ声がした。



「?あ」
「何してんねん」
「大輝に弁当盗まれたので大輝の財布を盗んで購買です」



購買で買ったパンが入っている袋を見せれば納得したのか笑っていた。
ちらりと袋を見れば緑色の不味いパンが顔を覗かせている。

先輩がそれを指差す。



「名字それ…買うたん?」
「はい、あ、いります?」
「それめっちゃ不味いやつやろ」
「あれ…知ってるんですか、この苦いやつ」
「ワシも一年の時に買うてしもた。購買のおっちゃんに聞いたら、この苦いやつゴーヤやて」
「どうりで…」



二人でパンに視線を移して顔を見合わせたが、味を思い出したのか二人とも渋い顔をしていた。

あの不味さは…ない。
深くため息をつく。



「大輝のバカちん…」
「ホンマ仲良しやなー…付き合うてるんかと思てたわ」
「…ありえないですよ」
「青峰も言うてたわ」
「兄弟ですよ兄弟」
「それも言うてた」



どこか複雑そうにそう語る先輩はどこか寂しそうな感じがして。
不思議に思って先輩を見ていればいつもの表情に戻った。

そうすればまた名前を呼ばれて振り替える。



「腹へった」
「アンタさっき私の弁当食べたでしょ」
「それよこせ」
「…食らえゴーヤぁあぁぁあぁあ!!!!!」
「げ、不味いやつだろこれ」



持ち前の運動神経でパンを顔に当たるスレスレでキャッチしやがった。
…チッ。

階段から降りてくる大輝から逃げるために今吉先輩の後ろに隠れる。



「来るなエロ魔神」
「誰がエロ魔神だ」
「さっき私の胸がどーの言ったでしょうが!!」



大輝をビシッと指差しながら叫べば大輝は怪訝な顔をした。

そのあと鼻で笑いやがった。



「お前が抱き付いてきたんだろうが貧相な胸しやがって」
「だぁあぁぁあぁあれが抱き付いたか馬鹿じゃないの!?それにそれなりにあるわ!!さつきと比べるな!!」
「マイちゃん以外は却下だ」
「ちょ、離せバカ!!」
「え、二人とも何しとったん?」



指差した腕を捕まれて袋を取ろうと奮闘する大輝と死守する私。
何がなんでも渡してたまるか!!

大輝のおでこを押してやれば私は頬をつねられた。



「離せー!!」
「よこせ」
「え、ちょ、無視?」
「大輝のバカちん!!」
「っるせ」



階段の踊り場で壮絶なバトルを繰り広げる私たちをワタワタしながら私に問いかける先輩。

聞こえてたけど返せなかったらまた聞かれた。



「名字ー!?ちょ、何してたんお前ら!」
「ヘッドロックかけただけですって!!」
「何や、ヘッドロックけ…びっくりしたわー」
「「…?」」



「そうかそうか」なんて言いながら安堵してどこかへ行ってしまった。

何かニコニコしてたけど何だったんだろ…?

自然と喧嘩の手は止まり、二人で顔を見あせて首を傾げた。

取り敢えず教室に戻ろう。
苦いパンは1つしかなくて、結局先輩が持っていったのかと理解してからお昼御飯にした。





(今吉先輩緑のパン持ってった…)
(変なやつだな)
(変わってるよね)
(…未だに小学生みたいに喧嘩する名前と青峰くんも十分かわってるよ)



→あとがき
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