黒バス/長編/今吉 T

□第17話
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「あー…ワリ。寝坊だわ」



わかってた事だよ。
大輝が遅刻してくるのだって。
わかってた事だよ。



「あん!?」



だけど予想外だったよ。
大輝はきっと第2Qできっと一本決めるつもりだった。
それを火神くんが止めたのは。



「本気とかないわ。ダルいし」



わかってたけど。
まさか後半に本気出すかも なんて。
期待するよ。

もうひとつもわかってた事だよ。
…さつきがレモンを丸ごと漬けて来ることだって。



「アンタ…教えてあげたのに…」
「だ、だって…皮ごといけるんじゃ…」
「輪切りって強調して教えてあげたのに…輪切りって」
「うぅっ…」



まぁ予測はできてましたけども。
本当に丸ごと浸けて来るとは思いませんでした。

さつきは涙目になりながらタッパを見つめていた。
予測していた私はカバンから果物ナイフを取り出した。



「ほら、これで切りなよ」
「!あ、ありがとう!!」



パァッと満面の笑みを浮かべて果物ナイフを受け取り、容器の蓋の上にレモンを置いてナイフを入れた。

肩を叩かれたので振り向くと、そこには今吉先輩が。



「ほんますまんな」
「いえ、予測していたので」
「ほんまありが…!?」
「ぅわっ!!」



次の瞬間。
私と先輩の間を黄色い物が飛んでいった。

飛んでいった先を見ると、半分に切られたレモンが壁にくっついている。

さつきとレモンに言いたい。



「なにこれ!?鹿の剥製か何か!?レモンバージョン!?何したらこうなるわけ!!」
「き、切れないから力入れたら飛んでいっちゃって…」
「はぁ…貸しなよもう…」



さつきからナイフを受け取り穴のあいだ容器の蓋の上でレモンを切る。
ナイフが容器の蓋を切り裂いてしまったようだ。
可哀想に。

ようやく選手に行き渡り、レモンを食べている時、原澤先生が入ってきて大輝とさつきが出ていった。

だけどさっきから少し引っ掛かってた。



「ありがとうな、名字」
「あ、いえ…」



先輩は私に接する時は普段とあまり変わらない。
あまり、変わらない。

さっきから話をしている時も、試合中も、どこか違った。
それはいつも試合の時に感じる物で。
帝光みたいな、でも違うような、



(だからやっぱり負ける気がしない)



そんな不気味な雰囲気の中、試合はあっけなく終わってしまった。
桐皇学園対誠凛は




―――――112対55で桐皇学園の圧勝に終わった。
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