黒バス/長編/今吉 T

□第10話
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5月も下旬になり、今日で試験も終わりだった。
テストは色んな意味で終わりましたけども。

周りは終令を終えれば、帰宅するために鞄に荷物を詰めながら帰りに何処によるか、また帰りに何を食べようかとかを話している。

期待はしていない。
わかってたことなんだけど…。



「何で部活あるの…」
「嫌なの?」
「部活が嫌なんじゃなくて何かね…」
「まぁわからなくもないけど」



苦笑いしながら鞄からお弁当を出す。
部活に行きたくないんじゃないんだけどね、なんかね、うん。



「私も買い食いしたいよー…」
「購買行けばいいんじゃ…?」
「違うのだよ桜井くん、さつきときゃっきゃしたいのー!…さつきと遊びたいんだもん」



机に突っ伏して足をバタバタさせながら「うー」と唸れば頭に手が乗る。
顔を上げれば目をキラキラさせたさつきがいた。



「何?」
「可愛い…!」
「…何か言いました?」
「怒んないでよもー。」
「可愛い言うな」
「よし、なら名前、休日出掛けよ?」
「行くー!!」



立ち上がって万歳すれば桜井くんはビックリしたのか「すみません!」と謝った。
そして床に落ちた鞄。
中身が床に散らばった。



「ありゃりゃ」
「もー…ん?名前これ…」
「ん?…あー…」



さつきが拾い上げたのは綺麗に包装された小さな紙袋。
“Thank-You”と書かれた金色のテープが貼られたそれは今吉先輩に渡すはずだったいつぞやのキーホルダー。

前にクッキーだけ渡してこっちを渡しそびれたまま鞄に入れっぱなしだった。



「渡さなかったの?」
「渡しそびれてまんまだったからねぇ…」
「誰かへのプレゼント…ですか?」
「あー…まぁ…」
「彼氏さんとか?」
「っはは、まっさかー」



紙袋をビニール袋に入れてそれをまた鞄に入れる。
教科書やらプリントも床から拾って鞄に戻した。
お弁当を食べながら話しているとあっという間で、部活開始時刻30分前になってしまった。

さつきは大輝を探しに行くと言って何処かへ行ってしまった。
桜井くんは着替えに部室へ。
私は体育館へ。
行けば若松先輩がシュート練をしていた。



「こんにちはー…」
「!おぉ、早いな」
「そうですか?」



普段は原澤先生が座る備え付けの椅子に座って足をプラプラさせながら窓から空を見上げていた。
暫くボーッとしていたら若松先輩が隣に座った。



「名字ってさ」
「?はい」
「………」
「…え、何ですか?」



黙ったまま何も言わない先輩はジーっと私を見つめてくる。
年上も男子も苦手な私にとって最悪の状態。



「…あのさ」
「は、はい」
「…彼氏いんの?」
「…は?」



今まで聞かれたこともない質問に拍子抜けする。
部活するときよりも真剣な表情をして私に問う。
…何この状態。



「彼氏、いるの?」
「い、いませんけど…」
「…え、いないの?」
「…はい」



急に身を乗り出して私に話しかける。
何嬉しそうに聞いてるんだこの人。

あれか、彼氏いないのをバカにしてるな絶対に。



「彼氏いないのバカにしてます?」
「はぁ!?ち、違ぇよ!?」



…そうだ。
絶対にそうだ。
「彼氏もいないとか寂しくないの?ww」とか言うんだ絶対…!



「彼氏いなくて悪いですか!?」
「いやむしろチャ――――」
「何や若松元気そうやなぁ」
「!?」
「名字困らして楽しそうやな」



私の肩に手をついて若松先輩に話しかけるのは今吉先輩だった。
なんか若松先輩が怯えてる。
今吉先輩の表情はみえないから何がどうなってるかわからない。

「ちょぉ来いや若松クン」とか言いながらゴール下まで行ってしまった。
後ろから諏佐先輩も来ていた。



「こんにちは」
「おぉ。…あいつら…子供みたいだな」
「?」



振り替えれば今吉先輩がボールを若松先輩に振りかぶっているところだった。
走って逃げる若松先輩。
桜井くんの後ろにかくれて何かを言っていた。



「男子はよくわかりません」
「いや、男子だからそうって訳じゃ…」



呆れてものも言えない。
そんな感じだった。
ため息を吐きながら仲裁に入りに行く先輩。
そうこうしてたらもう30分たっていて、練習が始まった。

若松先輩は今吉先輩から外周を言い渡される。
諏佐先輩にあきれられる今吉先輩。
桐皇バスケ部の先輩は変わった人ばかりです。
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