連載

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「ここまで来れば大丈夫だろ・・・」

後ろを振り返るが、誰の気配もない。
とりあえずここで一息つくとしよう。

「なあ、ヒルダ?」
「・・・・・・・」
「ヒルダ?」
「・・・、あ、ああ、すまない・・・」

ヒルダは何やら考え込んでいた様だ。
確かにここはおかしい事だらけだが、なんでこんなことになっているのか、皆目見当もつかない。

「あら、こんなところで油売ってるなんて」
「「ヨルダ!?」」

空間からいきなりの登場で、俺たちはぎょっとなった。
確かにヨルダならそれも可能だが・・・

「おいヨルダ!貴様・・・!」
「あらあらそんな怖い顔しないで?」

ふふ、と怪しい笑みを浮かべてヒルダに近づいてくる。
スっ、と伸ばされた手先が、ヒルダの頬に触れた。
ヒルダはそれに反応するわけでもなく、ただ黙っている。
それに少し首を傾げていたヨルダだったが、それは直後のヒルダの言葉で嫌でも分かるのだった。

「貴様・・・邦枝の心を弄びおって・・・!」
「・・・!」

どういうことだ?
しかしヨルダはその言葉で感づいたようで、笑顔が固まり、後ろに後ずさった。

「ど、どういうことだよ」
「さっきの奴ら・・・邦枝や古市・・・あの姿は奴らの“欲望”の姿だ」
「は?」

言われても、それはどう反応したらいいかわからなくなった。

「欲望に忠実になった、といったほうがいいか」
「欲望に忠実・・・」

ああ、だから古市はヒルダめがけて飛びついたのか・・・
たしかにいつもの古市なら、あそこまでしないはず。

「で・・・、邦枝の話になんでなるんだ?」

殺気だっていたが、元レディースである邦枝だからあんな姿でも特に変わってないと思うのだが。

「はあ〜・・・」
「なっ、なんでため息だよ!」

わけ分かんねえよ!しかも姉妹揃ってその目はなんだ。残念な人をみるような目で・・・


「とにかくっ!ヨルダ!」
「っ・・・!!」

一つ咳払いしたヒルダ。
そして次の瞬間、ヒルダの剣はヨルダの顎数oのところでピタリととまった。

「・・・元に戻せ」
「・・・分かった、わよ」

観念したように声を小さくするヨルダ。
パチン、と指を鳴らせば、一気に暗闇に包まれて吸い込まれる感覚に陥るのだった・・・・。
































「ん・・・」

ゆっくり目を開ければ、そこは教室だった。
も、戻ったのか・・・?

「いって〜!!」
「こ、ここは・・・?」
「・・・なんか体中痛いんですけど」

周りをみれば、同じように頭を抱える奴ら。さっきまでの空間に居た奴らだ。

「で、ヒルダ」
「分かってるわよ。・・・ちゃんと記憶は消した」
「そうか。」

・・・何がなんだかわからない。
ヒルダとヨルダは勝手に話を進めているし。
というか、記憶って・・・?

「じゃあ、これで大丈夫でしょ?」
「・・・ふん」

何が大丈夫なのか、そしてどうなったのかいまいち分からない。
それで古市に聞いてみれば。

「は?んなことするわけねーじゃん」
「え?いや、お前・・・」

あれは夢、だったのか?
しかしものすごくリアルだったような・・・


「安心して、あの世界に居た記憶は消した。
・・・邦枝も、恥ずかしくない」
「・・・?」

だから、なんで邦枝の話になるんだ?
そう首を傾げるも、誰も答えてくれそうになかった。

「じゃ、いいわよね?」

さっきのおびえた表情から一転、笑顔満載なヨルダに、どっと疲れる思いだった。

「ヒルダー♪」
「だからあまりひっつくな!!」
「じゃあ時々ならいいの?」
「そういう意味じゃないわ!!」

あ、やっぱりこういう展開なのね・・・

いつになったらヨルダから解放されるのだろうか、
大きくため息をつきながらも金髪姉妹のところに足をすすめるのだった・・・










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