連載

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「こ、ここは・・・」

気が付けば、目の前に広がるのは荒野。
周りを見渡しても、建物がない。

「おい、男鹿」
「ヒルダ・・・」

振り向けば、周りを警戒しているヒルダと目があった。
良かった、一人じゃねえ。

「ここはどこだろうか?」
「わかんねえな」

けど、ヨルダの持ってたソフトカバーを開けた瞬間、光に包まれた。
絶対ヨルダの仕業だな。

「とりあえず歩くか」
「そうだな」

何も無いが、ここに突っ立っているよりはマシなはず。
一応周りにも警戒し、進んでいくのだが。




「あっ、このっ、てめえヒルダさんとずりーぞ!!」
「・・・気のせいか」
「こら男鹿!無視するな!!」

あー・・・俺の目がおかしいのか・・・?
今、すごく小っちゃい古市がいたような。

「居たような、じゃなくて、居るの!」
「小っちゃすぎるだろ!!」

やっぱり古市なのか!?しかしなんでそのサイズ!?

「知らねえよ!けど・・・」

ニヤリ、と笑う古市に、なぜか背筋が凍った・・・古市のくせに。

「ヒルダさーーーーん!!」
「なっ!!?」

ピョーン、と。“ソレ”はヒルダめがけて一直線に飛んだ。
が、簡単に懐に入れさせてもらえるわけもなく。

「死ね!」
「うぎゃー!!!」

儚く散っていった。

「なんなのだ、あやつは」

はあはあ、と肩で息をするヒルダ。
よっぽど気持ち悪かったのか。
しかし・・・

「なんかおかしくね・・・?」

サイズの問題もあるが、それ以前に古市が“違う人”みたいだった。
確かに女大好きな古市だが、飛び込んだりしないはずだが・・・
しかも相手はヒルダ。やられるのは分かっているだろうに・・・

「とりあえず逃げるぞ!」
「あ、ああ・・・」

ムクリと起き上がる古市。顔は笑っていた。
それに嫌悪感を抱きながらも、先に進むのだった・・・























「はぁっ・・・はぁっ・・・」

古市からなんとか逃げ延びた。
あいつ、飛んでやがった・・・


「しかし・・・ここはいったいどうなってるんだ」

俺も同じことを思った。
一面荒野で。出会ったのは、小さい古市。
これは夢それにしてもか?リアルすぎる・・・

「葵姐さんを悲しませたら承知しないからね!」
「・・・、またかよ・・・」
「ちょっ、ため息とかチョー失礼っス」
「うん・・・」

今度は邦枝のところの・・・あー、名前わかんね。
けど、いつも一緒にいるやつら。
なぜかこいつらも・・・小さい。

「というか葵姐さんはどこだい!」
「し、知らねえよ」

ギッと睨まれ、小さいながらもその迫力に少しばかり、ほんの少しばかり引いた。

「とりあえず消えな!!」
「なんで!?」

すんでのところでチェーンを避けた。あっぶねっ・・・!

「とりあえずやられるっスよ男鹿っち〜」
「寧々さん・・・ファイト」
「意味わかんねえよ!」

なんでチェーンで狙われ、後ろではのんびりまったりやられろと言われるのだろうか。
やっぱりここも危険なのか!?

「逃げるぞ男鹿!」
「ああ!!」












































「たくっ・・・いったい何なんだ・・・」

ガシガシを頭をかいても、何も思い浮かばなかった。
というか、俺らにどうしろってんだ・・・

「とりあえず冷静になろう」
「あ、ああ・・・」

腕を組んで考えこむヒルダ。
正直こういうのは苦手なのだが、いいかげんこんな変な世界とはおさらばしたい。
おとなしくヒルダを待っていれば。

「ようようご両人、何してるんだ、あ゛ぁん?」
「一目憚らずいちゃいちゃですか、男鹿」
「てめえら・・・」

今度は神崎と姫川かよ・・・
こいつらも例に漏れず、小さいし。
いったいなんだというのだ・・・

「おい貴様ら、どうして貴様らは小さいのだ」


おお、これはまたストレートにいったぞ。
しかしそれを見越していたのか、神崎と姫川はニヤリとした。

「「それは・・・」」

二人の言葉が重なった。

「私たちに勝ってからよっ!!!」

後ろからの急な声に反応できなかった。

「何をぼさっとしておるのだ!!」
「く、邦枝・・・!?」

いきなり2人の後ろから飛び出してきたのは、これまた小さい邦枝だった。
一瞬の反応が命取り。
こうしてヒルダが庇ってくれなければ、どうなってたか分からなかった。

「オラオラどーした!お前の相手は俺たち・・・」
「うるせえ!!」

ドカリと殴れば、あっけなく散っていった。
ふんっ、こいつらは相変わらず弱ぇな。

「ヒルダ!こっちは・・・」

終わったぞ、と続けようとして見れば、ヒルダと小さな邦枝が、互角ではないか。

「おいヒルダ!」
「分かっておる!だがっ・・・!!」

火花が飛び散り、一瞬の隙で勝負が決まりそうだった。
それゆえ、逃げることができなかった。

「しゃーねえ!!俺と代われ!」

女を殴る趣味は無いが、ここを抜け出すためには仕方ない。
すばやくヒルダの前に出れば、ヒルダから驚きの声があがった。

「貴様に邦枝をやれるわけなかろう!」
「うるせえ!こーでもしなきゃ・・・」

やられるだろ!!
と続けようとしたら。

「あっ・・・あ・・・・!!」
「む・・・?」
「邦枝・・・?」

真っ赤な顔、震える身体。
明らかに・・・おかしい。

「邦枝?」
「うっ、うっさいわね!!」
「「はあ?」」

いきなりどうしたのだろうか。
しかしこれは好機ではないか?

「逃げるぞヒルダ!」
「あ、ああ・・・!」

口をパクパクさせる邦枝をチラリと見た。
追ってくる気配はない。
よし、急いで逃げれば・・・

ヒルダの腕をつかみ、とりあえず安全な場所へと逃げるのだった。

「ヨルダめ・・・」


ヒルダの小さな小さなつぶやきは、誰にも聞こえなかった・・・。





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