連載

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3、授業中?

『か、賭けをしません、か?』

真っ赤な顔して、絞り出すようにいった言葉は、思いのほかダメージがあった。


「・・・ぃ」
「・・・・」
「おい男鹿!!」
「・・・ああ、古市か」

キーンコーン、とチャイムが鳴ったが、先生が来る気配はない。
必然的に授業は自習となるわけで。
特に何もすることは無いから、肘ついて外を眺めて。
朝の出来事が頭の中にリプレイで流れているものだから、古市のドアップにまで気付かなかった。

「お前どーしたんだよ。ボーってして」
「いや・・・」

『私、辰巳さんに好きになってもらうようアタックしますね!』

リフレインし、ボッと顔が赤くなった。

「うわっ、どうした!?」
「何でもねえって!」

ああ、やばい。今のヒルダは俺の事、その、あれ、なんだよな・・・?

「辰巳さん・・・」
「うわぉあ!?」

び、びっくりした・・・!

おずおずと、頬を染めるヒルダ。
うう、なんか恥ずかしい・・・

「あのー・・・俺の事、忘れてません?」

後日、古市から『このバカップルめ!』とつっこまれるのだが、今の俺にはそんなの関係無かった。

「あの、ちょっといいですか・・・」
「な、なんだよ・・・」
「とりあえず行きましょう」

え、と言う隙もなく、掴まれる左腕。
必然的にヒルダと近くなるわけで、さらに顔が熱くなる思いだった。




















「おい、どこいくんだよ!」
「・・・」


ヒルダに引っ張られるまま、どこに連れて行かれるかわからないまま。
ヒルダが返事をする気配はない。
ここはおとなしく従っとけってか。

と、あきらめにも似た感情を持っていると、いきなりヒルダがクルリと振り向いた。

「あの、朝の事を覚えていますか・・・?」
「・・・・あ、ああ・・・」

朝の事。言わずもがな、ヒルダのアタック、である。

「あの、その、ああは言いましたが・・・その・・・」
「あー・・・」

恥ずかしい。直接言われているわけでもねえのに、なんだこの羞恥心。

「皆さんの前ではちょっと・・・」
「まあ・・なあ・・・」

色恋に疎そうな連中だが、必ず野次馬となりそうな連中だ、何言われるかわかったものではない。
確かにあの教室にいるのは、ちょっと危険な気がするのだが。

「ですが、ここなら大丈夫、ですよね・・・?」

何が大丈夫なんだよ!!
おお、これは2人きりのほうが危険なのか!?

「って、何してらっしゃるの、かな・・・?ヒルダさん・・・」

視界からヒルダが消えた。というか、下にきた。
ふわりと香るヒルダ、と、やわらかな感触。
思わず敬語になってしまった。

「…好きです、辰巳さん」

う、なんてストレートな言葉。
普段のヒルダからは絶対に想像できない言葉が今、鼓膜を震わせた。
というか、ストレートすぎるだろ!!

「その、い、色々と考えたんですが考えがまとまらなくて・・・」

下を向けば、耳を赤くして俯くヒルダ。うわ、なんか嬉しいかも。

「あ、あのっ!」
「うわっ!!」

バチリと目があった。
意外に・・・近い。

「辰巳、さん・・・」
「っ・・・」

スっ、と閉じられる瞳に、俺の心臓は一気に音をたてて動き出した。

「ヒルダ・・・」

・・・ああ、なんだよ。
俺も案外チョロイんだな・・・
なるだけ優しくヒルダの頬に触れれば、ピクリとヒルダが反応した。
頬を染めて・・・緊張してるのはなんというか・・・可愛かった。

「ダーブダブッ!!」

のだが。

「ベル坊・・・」

おいおい、なんつー邪魔だよ。

「アゥ・・・」
「わー泣くな!分かったから泣くなって!」

ウルウルと、涙を目にためている。
おそらく・・・腹が減っているのだろう。
哺乳瓶・・・げ、教室だ。

「・・・一回、教室に戻りましょうか」
「あ、ああ・・・」

ヒルダも察したのだろう。
さっきの甘い雰囲気は無く、ヒルダは踵を返した。




というか・・・俺、このまま持てるのか・・・?



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