連載

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男鹿とヒルダに最後に会ってから3日経った。
たった3日が、ものすごく長く感じて、ため息をついた。

「ヨルダ、どうしたのじゃ最近」
「え、あ、な、何でもありませんわ坊ちゃま!」
「?」

あ、いけないいけない・・・今そんなことを考えてる場合じゃないでしょ?

「それよりゲームじゃ!」
「はい坊ちゃま!」

そうよ、男鹿の事をなんで考えてるのよ私は!
今は坊ちゃまが先決よ!

「そうじゃ!今日は古市のところにでも行こうかの!」
「え・・・?」

坊ちゃまの言葉に、私は固まった。
ふ、古市のところですって・・・?
・・・なんとなく、嫌な予感がした。

「よろしく頼むぞヨルダ」
「は、はい坊ちゃま!」

次元転送悪魔として、私が使われることは決まっていた。
古市の家・・・行くのは簡単だが、もしかしたらあいつが・・・

「い、行きますよ・・・」

それでも主君の命令には逆らえない。
もしかしたら、男鹿は居ないのかもしれないし。
そう信じ、モップを強く握った。














































「お、久しぶりじゃねえか焔王」

な、なんで居るのよ・・・!
よりにもよってこんな日に・・・!!

「おう、来てやったぞ」
「どうせゲームするんだろ?まあ座れよ」
「ふふふ、余のテクニックに酔いしれるといいぞ」

しかしそんなことはおかまいなしに話を進める坊ちゃまと男鹿。
並んでコントローラを取り、ゲームを始めてしまった。
というか、いつのまにこんなに仲良くなったのよ・・・

パッと見兄弟のように並んでコントローラを握る二人は、兄弟のようだ。

「ぐぬぬ、やりおるの男鹿よ・・・!」
「はっ、こんぐらい楽勝・・・よし勝った!」
「ぎゃあああ、余が、余が負けじゃと・・・」

画面では、大きく「ゲームオーバー」の文字。
男鹿の操作キャラが拳を振り上げ、坊ちゃまの操作キャラが膝をつき放心状態。
一目瞭然、坊ちゃまが負けたのだ。

「次じゃ!次は・・・ヨルダがするのじゃ!」
「え!?私ですか!?」

絶対勝つのじゃぞ!と渡されたコントローラは、坊ちゃまの期待でズシリと重たかった。
というか、私ゲームってあまり得意じゃないんだけど・・・
ああ、こんなことならイザベラも呼ぶんだった・・・

「よし、ヨルダやろうぜ」
「え、あ、も、もちろんよ!」

いきなりの名前呼びに顔が熱くなったが、男鹿はそんなことはおかまいなしにスタートボタンを押した。

「・・・」
「・・・・」
「・・・・・・・・、よし、これで決まりだ!」

パチンっ、とひときわ大きなプッシュ音で、背景が切り替わる。
これは、必殺技の時のモーションだ。
そして私のキャラが負けた。
男鹿の笑顔に、私は“負けた”。

「よ、ヨルダでも負けじゃと・・・?」

坊ちゃまは信じられない、と目を見開いていた。
本当なら、ここで坊ちゃまのフォローに入らなければならない。
しかし、勝利した男鹿の笑顔に目が奪われ、私は放心状態だった。

「ヨルダ?」
「・・・」
「聞いておるのかヨルダ!」
「は、はい!!」

あ、危ない・・・坊ちゃまにまで心労をおかけするのはいけないわ!

「すみません坊ちゃま。今日はその調子が・・・」

頭から男鹿の笑顔が離れず、そんな言い訳しか浮かばない。
しかし坊ちゃまはそれで納得したようで、これ以上追及してくることは無かった。

「さあさあ次はどーするよ?」
「ぐぬ・・・」

ニヤニヤと、意地の悪そうな笑みを浮かべる男鹿。
完全に楽しんでいる。

けど、私は・・・


いつまでも、男鹿の笑顔が頭から離れなかった。





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