小説
□I want・・・
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それは姉上様からの一言から始まった・・・
「今日辰巳の“誕生日”なんだけど、何か用意した?」
「“炭、城日”・・・?」
つまりは“城”を“炭”にする“日”なのか?
そうか、ついに男鹿も人間界征服を決意したか。
「盛大に間違えすぎだろ!」
早速その準備をば、と男鹿の部屋に行けば、お前は馬鹿か、とか、城ってなんだよ、と呆れた声で言い放った。
「お前、“誕生日”も知らねえの?」
「だから何なのだ、“たんじょうび”とは」
どうやら自分が思っていたのとは違うようで。
自分を知らない事を男鹿が知っていることに若干苛立ちが募るが、人間界のことは人間に聞くのが一番の早道、かもしれない。(こいつの場合、きちんとした答えが返ってくるかは分からないが)
「誕生日っつーのはな・・・そいつが“生まれた日”だな」
「生まれた日・・・?」
「で・・・」
ニタリ、と笑った瞬間。
「欲しい物が手に入る日」
気づいたら、数メートル離れた男鹿の顔が、わずか数センチになっていた。
「お前が欲しい“ヒルデガルダ”」
一気に体が熱くなる。
逆に男鹿は涼しい顔で、私を抱きしめている。
「なっ・・・!」
脳内で逃げろ、と警鐘をあげた。
しかし体は動かない、動けない。
「逃げるなって」
「離せ・・・!」
男鹿の胸板を押してもびくともしない。
これが男女の差、なのか。
・・・・と諦めかけていたら。
「ちょっ・・・!」
「な・・・!?」
わずかな抵抗が功を奏したのか、男鹿がふらついた。
そこにかかるは私の体重。
倒れ掛かった体は重力を逆らうことが出来ず、バフンっとベッドへ倒れこむのだった。
「・・・勝った」
「は?」
「いや、こっちの話だ」
なんとなく優越感。
それに浸っていれば、改めて男鹿のぬくもりに包まれた。
「で、返事は?」
「・・・さあな」
は?と顔をしかめた男鹿の唇を塞いでやった。
(とりあえずこれで我慢しろ)
(・・・マジですか)
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