小説

□ありがとう
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最近男鹿の様子がおかしい。
どこか挙動不審で、目があったら逸らされて。
以前の自分なら特に気にすることでも無かったのに、何故か“気にしてしまう”から頭が痛い。
・・・と、その話は置くとして。

なぜその話になったかというと、不自然な態度、そして帰りの時間が遅くなった、ということである。大体夕ご飯前には帰ってくるのに、最近は食べ終わるくらいに帰ってきたりするのだ。
一度帰ってくるまで待っていたら、
「何で食べてねーんだよ!」
と怒られてしまった。

「わ、私は坊ちゃまと一緒に食べようと・・」
「ベル坊だって先に食べてほしいって言ってんの!」
「ダッ!」
「ぼ、坊ちゃま・・・」


大きくうなずく主君に、私は引き下がるしかなかった。
それ以降、男鹿たちの帰りを待つことをしなくなった。もちろん、ゆっくり食事していたが。それでも食べ終わってから帰ってきていた。


それが数日続いたある日、珍しく男鹿は夕ご飯前に帰ってきた。
珍しい、と思ってしまった自分に驚いた。
ただいまー、と言って階段を上ってくる音がする。その足音は私の部屋の前で止まって扉を開けて。そして、


「これ、やる」


目の前に一輪の花。


「これは・・・?」
「・・・姉貴に聞けばわかる」


そう言って部屋を出て行ってしまった。

「・・・・・・?」


一体何なのだこれは。そしてこの花は?

そんな疑問を浮かべたまま、最後に男鹿が言った「姉貴に聞けばわかる」という言葉、
おねえさまに聞けばわかるのだろうか?





「ああ、これは“カーネーション”って花よ」
「かーねーしょん?」
「今日はね・・・」



意味を聞いてどうしようもなく愛しくなったのはいうまでもない。





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