小説
□待ちきれません。
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「よし、やっと魔王倒したぜ!」
今日も今日とて男鹿はゲームに夢中だ。
学校から帰ってくるなり胡坐をかいてゲームの電源を入れる。坊ちゃまは胡坐をかいた男鹿の膝にのって一緒にゲームをしている。
坊ちゃまも喜んでおられるのだから、邪魔はしたくない。
したくはない、のだが・・・
「ん?ヒルダどうした?」
男鹿の背中はあったかかった。
「珍しいな、お前がこんな」
甘えてくるなんて。
そう言って男鹿は私と視線を合わせ、口角を上げた。
「貴様の背中は広いな」
両手ではおさまりきれなかったが、なるだけ男鹿のぬくもりを逃さないとばかりに抱きしめた。
「でも俺はこっちがいいかも」
男鹿はゲームに夢中だった坊ちゃまを自分の横に移動させ、私の腕を引っ張った。
気づけば、坊ちゃまの位置に私がきていた。
「な?」
「な?って・・・」
すぐ近くに男鹿の顔。見慣れてるはずなのに、なんだこの羞恥心は。
ああ、顔があつい。
「そう煽るなって」
「は?―――んんっ」
疑問の声は呑み込まれた・・・男鹿の唇で。
「こっちがいいだろ?」
「っ・・・」
したり顔で問いかける男鹿が腹立たしい。
しかし男鹿のペースに巻きこまれているのも事実で。暖かくて、安心できるぬくもり。
このまま寝てしまいたい、な・・・
「・・・そうだな」
「でもちょっと早いかも」
「む?」
何が早いのだろうか?
すでに男鹿の腕の中で睡魔が襲ってきそうなのに。
「だってまだベル坊がおきてるし」
時計を見れば、まだ夕方の5時にもなっていなかった。
「続きは夜な?」
そう言ってまた唇をふさがれた。
「〜〜!!」
「決定な」
ほれベル坊、続きすっぞ
今まで事の成り行きをもていた坊ちゃまを頭にのせ、私を膝にのせたままゲームを始める男鹿なのだった・・・。