小説

□真似してみました。
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ん、ここは…


そこは何も無い、景色が真っ白な空間だった。
誰もいない、いつもは肩に乗っているベル坊さえいない。
正真正銘、一人、だ。


「とりあえず歩くか…」


ここにいても始まらない。
真っ白で何も無い空間をアテもなく歩いていく。


……ふむ、これは夢、だな。
ベル坊見当たらないのに電撃こないし。
しかし…夢って認識したら醒める、なんて言わないか?


「ウィーー!!」


……あ、ベル坊居たわ。
でも見当たらない。
更に足を進めると、信じられない光景が広がっていた。


「なんでだよ……」


そこには、キャッキャッとはしゃぐベル坊を抱き上げて頭を撫でる東条と、それに寄り添うヒルダの姿があった。
頭を鈍器で殴られたような、そんな感覚。
喉もカラカラになって発声の仕方も忘れたように言葉を発することも出来なかった。

























********















「はっ!!?………夢、か」



そーだよな、あんな光景…
ん、ベル坊も居るし、あれは完全に夢だ。
あー、良かった……


って、なんで安心してるの!?
別にベル坊とあの女が東条の所に行こうが関係ねぇじゃんかむしろ好都合?


「……、チッ」


最初は嫌だったはずなのに、今じゃ近くにいることが当たり前になって。


「……一応確認するか」


隣ですやすや眠るベル坊を起こさないように、ゆっくりと部屋を出た。



















「ヒルダは?」


自室から出てまずはヒルダの部屋に行ったが、そこはもぬけの殻だった。
律義に布団は畳まれており、彼女の性格を改めて認識し、俺とは正反対だよなぁとごちて次はリビングへ。
しかしそこでもヒルダはおらず、朝食準備中の母親に所在を聞いたら、あっさり「新聞を取りにいったわ」と返された。


「ふーん…」
「本当、働き者よね」


あんたは幸せ者よ、と朝食を作りながら言う母親の背中に「……そうか?」と興味無さそうに、極力興味無さそうに返す。
別にフリでもなんでもなく、本当な事で…


でも、と言葉を付け加えられて即座に反応してしまうところが悲しい。


「遅いわね、ヒルダちゃん」


新聞取ってくるくらいで…と言葉が続き、確かに、と納得する。
俺が来た時点でいなかったのだから、もう帰ってきてもおかしくは無いのだ。


「………」


なんとなく、嫌な予感がする。
こんな朝から、なんて関係ない。ただ直感で。
自然と玄関へと足は向いていた。




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