小説

□二人の序章
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*ヒルダ視点
夏休み。
遊び、スポーツ、勉強…
各々が思い思いの時間を過ごせる時間。
学生であるヒルダにとって、ある程度は自由がきくというのに、窓を開けて風通しの良くなった自室で暇を持て余していた。


宿題もやった、家事もあとは洗濯物の取り込みと夜ご飯の準備のみ…現在14時だからまだしなくていい…
部屋の掃除は午前中に済ませた…ついでに買い物も。

……つまり、やる事がない。
ダラダラ過ごす、という手もあるが、なんとなく勿体無い気がする。
生真面目な性格故、それが出来ないでいたヒルダ。

……と、ふと浮かんだある男の顔。


ソイツはついこの間隣に引越してきた15歳の男の子。
ボサボサな黒髪に、鋭い目付き。
転校する前は“アバレオーガ”なんて言われ、ケンカ番長だったらしい。
何故こんな時期に転校?という話だが、本人曰く「イメチェンだ!!」とのこと。
……いささか使い方が違う気もするが、あまりにも堂々と言い放つものだから訂正する気も無くなった。

そして彼は9月から転校生として、同じ学校に通うらしい。
まだ同じクラスになるとは限らないのに、何故か心踊る。

……そうだ、挨拶にいこうか。
お互い一人暮らしだし、何か料理を持って。

さて、何を作ろうか…
……誰かのために作るだなんて久しぶりだな。



男鹿の笑顔が見れたらいいな、と自分でも驚く乙女思考にくすぐったさと心地よさを感じながら台所に立つのだった……













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