小説
□忘れろ
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「何怒ってんだ?」
「怒ってなどいない」
怒ってんじゃん…
そう呟きそうになって慌てて止めた。更に不機嫌になる可能性大だからである。
俺、なんかしたか……?
別に何もしてない、よな……
何も浮かんでこないからヒルダの方を見れば、いつの間にか近くなった距離。
それに一瞬体が強ばったかと思うと、いきなりヒルダに両手を掴まれ、そのままヒルダを包むように背中に回された。
「!!?」
「貴様は……私の体だけ覚えておけば良いのだ」
「な……!?」
な、なんつー殺し文句…!!?
あぁ、ヒルダから良い匂いがする……
本能かそうじゃないのか、知らずに腕に力を込めようとしてたら、するりとヒルダにかわされてしまった。
「く、く……」
「く?」
「邦枝の体は忘れるのだぞ!いいな!?」
「ちょっ…………」
………
あーやべ、めっちゃ可愛い
何あれ顔赤すぎるだろ…!
しかしなんで邦枝?
「前に坊ちゃまと体が入れ替わっただろう?」
「あー…」
あの時は大変だったなぁ、結局損したの俺だし。
「中身が坊ちゃまとはいえ、貴様は邦枝に…」
「は?」
「だ、抱きついたではないか!!」
…………
「いやいやいや、あれはベル坊であって俺じゃ…!」
「だが邦枝の感触は覚えているのではないか?」
「んなわけねーだろ!!」
あの時は本当にベル坊の体の感覚しか無かったんだ、完全にヒルダの言いがかり………
と思った所で、とある考えが浮かんだ。
「お前、もしかして…」
「む?」
「邦枝にしっ……」
「それ以上言うと殺すぞ!!」
「ぐほっ!!?」
がっ…!!
も、モロに入ったぞコレ…
「お、おい……!!」
「いいか、忘れるのだぞ!」
そう言い残し、ヒルダは出ていってしまった。
一方俺はというと…
「何なのあいつ……可愛すっ……ぃってー!!」
「だ、ダゥ……」
嬉しさと痛さに悶絶してたからか、ベル坊に冷たい眼差しを受けていた……