小説

□ネガイゴト
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「はい、ヒルダちゃん」


笑顔を浮かべる美咲からいきなり渡されたのは小さな長方形の紙。


「これは…?」
「そっか、マカオには無いのかしらね、七夕」
「タナバタ?」


初めて聞く単語に疑問符を浮かべていると、美咲は「七夕はね…」と説明するのだった―……

















「……というわけだ、貴様も書け」
「はあ?」


先ほど美咲から貰った短冊を男鹿の前に突き出す。
男鹿の目が見開かれる。


「なんで俺?」
「坊っちゃまは先ほど立派に書いておられたぞ」
「立派、ねぇ…」


ヒルダが持っている“立派”な短冊に目を落とす。
……どう考えてもミミズが這った様な字だ。


「ダーブッ!」
「……」


目をキラキラさせるベル坊に何も言えまい。
それに仕方ない事だ。
魔王の子とはいえ、まだ赤ちゃんなのだから。



「だから貴様も書け」
「はぁ?んなこと、いきなり言われても…」
「……」
「つか、お前は書いたわけ?」
「書いておらんが?」
「じゃあお前も書けよ」


ヒルダは願い事は必要ない、と思ってた。
主人に仕える、侍女悪魔なのだから。


「そうだな…」


いざ自分で考えると中々難しい。ふむ、と悩んでると、とある願い事を思いついた。
しかし思いついた願い事は、ヒルダ個人のものではなく、ある人たちの“悲願”である。


「“人間界の消め…”…」
「何物騒な願い事してんだ!!」
「そうか?」
「つうかそれ、“お前”の願い事じゃねぇし!!」


いい考えだと思ったのにな、と呟くヒルダに冷や汗を垂らす男鹿。
いくら七夕の願い事とはいえ、そんな物騒な願い事があれば彦星と織姫の逢瀬どころではない。
それに、この願い事を家族に見られた時の対処が出来ない。
だから“普通”の願い事を書くよう催促する。


「他にねーのかよ」
「他に……」


そう言われても、急に浮かんだら苦労しない。
何かないか、と視線をさ迷わせていると、ジーッとこちらを見る男鹿と目があった。


「………あ」
「何か浮かんだか?」
「いやっ、その…!」
「?」
「ダ!」
「ん?どうしたベル坊?」


急に落ち着かなくなるヒルダの様子に疑問符を浮かべる男鹿だったが、ベル坊から腕を叩かれたせいでベル坊へと意識がいった。
それをヒルダが安堵の息を吐いてるとは、男鹿が知ることは無かった。






















みんなと……

男鹿と一緒にいれますように、なんて書けないからな!!!

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