小説

□貴方の時間を僕にください
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「雨、ですぅ……」


どんより曇り空に大粒の雨が窓を打ち付ける。
…こりゃ外には出られないな……

それを分かってるはずなのに、さっきから窓にへばりついているお嬢さんはため息ばかりだ。


「仕方ねぇよ、雨なんだし」
「ですが…」


そう、本当はお嬢さん……エステルと買い物に行く約束をしてたのだ。
久しぶりの休みでしかも2人きり、なのはしばらく無かったから、エステルも楽しみにしてたのだろう。
外を見て、またため息をついた。


「また今度な」
「はい……」


すっかりしょんぼりした彼女の頭を撫で、髪を指に絡めた。


「ま、今日は…」
「あ!」
「へ!?」


家でゆっくりするか、と言う前に、エステルは何か思いついたように手を合わせた後、俺の横をすり抜けて玄関の方へ行った。


「フレンのところに行きません?」
「ちょっ…!!」
「先に行ってますね〜」


制止虚しく、いつもだったら思わず抱きしめたくなるような愛らしい笑みを浮かべたエステルはそのまま扉を開けて外に行ってしまった。


「よりによってフレンかよ……!!」


本名フレン・シーフォ。
隣に住む幼なじみ兼親友である。
信頼はしてる、してるのだが………


『一時期噂になったからなー…』


それは全くのデマだったのだが。
それでも心配になる俺は何なんですか?


「フレン、居ませんでした…」
「帰ってくるの早っ!」


いくらお隣さんだからって早くないか?


「車でどこか行くところが見えました」


……あ、なるほどね。


「ま、おかえりエステル」
「ただいまです」


私の家じゃないですけどね、とエステルは微笑んだ。


「じゃあ、お前の家にすればいい」
「はい?」




「そしたらいつでも会えるだろ?」





休みの日を調整なんてせず、毎日会える。
今頃あいつは一人で家にいるのか…なんて心配しなくていいし。
嗚呼、なんて素敵。





















「お前の時間を…俺にくれ」



























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