特別な品 2

□特権
1ページ/3ページ

・ヒルダの場合
その日はとにかく調子が悪かった。
のどは痛いし頭は重いし寒気はするしで坊ちゃまへの態度がそっけないものになってないか不安になるくらいだった。
そして目の前がどんどんと暗くなり、体もなぜが右に倒れた。


気付いた時には、超至近距離で男鹿に覗き込まれるという、普通ならありえない、むしろ切り刻んでしまう状況になっていた。
なぜ切り刻まなかったかというと、体が動かなかったから。(べ、別に変な意味はないからな!)


「男鹿・・・?」

「やっと目覚めたか」


目の前でニッと口角をあげ、顔が離れた。
なぜか少し寂しくなったのを誤魔化してゆっくりと起き上がって周りをみると、
そこは坊ちゃまが寝床にしている場所、つまり男鹿のベッドの上だった。


「それにしても驚いたぜ。悪魔でも風邪引くんだな」
「風邪・・・?」
「ま、今日はゆっくり休めよ」
「・・・は?」


男鹿言葉に違和感を感じた。
あの男鹿が、私を労わる言葉を・・・?



「いつも・・・ありがとな」


疲れが溜まってたんだろ?と心配そうに言う男鹿。夢を見ているようだった。
一応自分の頬をつねった。・・・痛い。
信じられないが、これは現実のようだ。


「じゃあ・・・」
「?」
「手を・・・」


いつもみたいな凶暴男じゃない男鹿に、甘えることにしよう。


「手?」


男鹿の右手に視線を向ければ、男鹿も己の右手を見る。
そんな男鹿の手を包めば、男鹿の肩がピクリと跳ねた。
心なしか、頬も少しばかり赤い。


「眠るまで握っててくれないか」


包んだ男鹿の手は暖かく、そして落ち着いた。


「お、おう・・・」


あの凶暴男が照れるのも珍しい。
そして照れさせてるのが自分だという若干の優越感に浸りながら、瞳を閉じるのだった。









次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ