特別な品 2
□無自覚夫婦
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「ふあ〜、よく寝た」
「お前、ずっと寝てたな」
暖かい日差しが窓から差し込んで寒くも暑くもない”丁度いい”気温で、昼食後1時間という時間帯も相まって、クラスのほとんどが舟をこいで負けていた。
男鹿辰巳ももちろんのの中の一人だが、彼の間合いは日ごろの疲れもあってか帰りのHRあ終わったことすら気づかず、周りを見ればいつも一緒に帰る古市がいるだけだった。
「帰るぞ」
ほれ荷物、と渡された。
それを適当に返事して持ち、いまだ夢の中のベル坊を頭の上に乗せて歩こうとしたら、ふと何かが足りない、と思って足を止めた。
「・・・ヒルダは?」
見渡すが、いつも居るであろうヒルダが居ない。
古市に聞けば、呆れたようにため息をつかれた。
「屋上に行ったよ」
「屋上?」
こんな時間に何の用事があるのだろうか。
というかベル坊ほっといて何やってんだあいつ。
「告白されにいった」
「・・・は?」
「だから、告白されに・・」
「なんで!?」
いやいやいや、告白ってあの告白だろ?
ヒルダが!?ヒルダが告白されてるのか!?
畜生、何故か気になって仕方ねえ
「じゃあな古市!」
「ん?」
「屋上いってくる!」
そして教室に古市を残し、全速力で屋上に向かうのだった・・・
胸の中でかかった靄を払うかのように。
「・・・・・・遅いっての」
ひとり残された古市が、ため息混じりにつぶやいたことを俺は知らない。