特別な品 2
□precious treasures
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「おーい、転ぶなよ〜」
その日は良く晴れた、雲一つない休日だった。
妻が引き当てた福引で、某テーマパークの入場無料券を使っての休日だった。
先日小学校へと入学した子供2人はもちろん喜んだ。
前日から寝れない、といった様子だったが、寝れないと明日行けないぞ、なんて言ったら
じゃあ寝なくちゃ!と目を硬く瞑ってたっけ。
そんな充電満タンな子供2人は入口を通った途端、元気よく走り出した。
そこはヨーロッパを感じさせるような、まるで異世界のような場所だった。
そんなところなためか子供は目を輝かせた。
「どこ行こっか?」
そんな話を楽しそうに話しているのを聞けば、自然と笑みがこぼれた。
「ふふ、来てよかったな」
「そーだな」
後ろから声がした。
きれいな金糸が揺れ、思わずドキリとなった。
「お前も転ぶなよ?」
「わかっておる」
出会った頃では想像もつかないような綺麗な笑み。
誘われるように手を伸ばせば、ゆっくりと手を重ねられた。
「パパ―!ママー!」
「早く早く〜」
子供たちは知らぬ間にかなり遠くに行っていたが、小さな体を大きくつかって手を振っていた。
それに手を軽くふってこたえれば、子供たちは一層笑顔になった。
「ねえねえ、ここ行こうよっ」
指差した場所は、木で立てられた建物だった。
入口にはスタッフの男がたっており、子供たちをみればニコリとしわをつくった。
「入るかい?」
「「うん!」」
じゃあ行ってきます!と腕につけられたフリーパスのバーコードつきネームバンドをかかげ、2人は入っていった。
「あ、出口はそちらですから、その間はこのベンチでお休みください」
男が指さした場所には、きちんと『exit』と書かれていた。
どうもこの建物は、この建物のどこかに隠された『宝物』を探し冒険する、というコンセプトのものらしい。
あいつら喜びそうだな・・・と思った。
「どのくらいで戻ってくるんだろうな」
「さあな」
もしかしたら、宝物そっちのけで探検してるかもな・・と言えば、そうかもしれん、と笑みを浮かべた。
会話して沈黙。しかしそれはとても心地よいもので、全然苦では無かった。
「つーかよ、体大丈夫か?」
まだ日があまり高くないとはいえ、空は快晴、地面はコンクリート。
じわじわと暑さが襲い、じっとりと背中が汗ばむくらいだ。
「ああ、心配ない」
「けど・・・」
「「ただいまっ」」
「お、おう、おかえり」
2人揃って笑顔。どうやら『宝物』をちゃんと取ってきたらしい。
話の途中だったが、これはうやむやになりそうだ。
笑みを浮かべる妻を見るが、あえて触れないようにしているようだ。
「ねえねえ、見て」
「ちゃんと取ってきたんだよ」
褒めて褒めて。
そう言っているかのような子供たちに、俺たち親は裏切ることなく。
わしゃわしゃと頭を撫でれば、痛いよ〜と嬉しそうに照れた。
「あのね、お母さんっ」
「ん?」
「これ見たら、“この子”は喜ぶかなあ」
こいつら・・・
子供子供かと思いきや、ちゃんと成長しているんだな・・・
「ああ、喜ぶよ」
「ありがとな、“お兄ちゃん”、“お姉ちゃん”」
妻の大きくなったお腹にみんなで触れながら、いつまでもこんな幸せが続きますように・・・
そう願った。