特別な品 2

□新たな形
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えーっと・・・これは一体何?


「わあ!これ美味しいネ!」
「神楽が喜ぶかと思って・・・買ってきた」

なんで見廻組の奴が居るんでぃ?

「で、なぜ貴方がいるの?」

ギロリ、と睨まれた。
というか、それはこっちのセリフ。

「あ、サドどーしたアルか?」

…え、今気付いた感じ?
くっ、笑うんじゃねえよ

「じゃあ神楽、行こう」
「え?どこにアルか?」
「・・・こっち」

淡々と、それはもう一瞬。
グイ、と引っ張り、走っていった。

「・・・あんにゃろ」


この俺の目の前で逃亡するたぁ、いい度胸じゃねえか。




































「くっそ・・・どこだ・・・?」

女とはいえ、夜兎族と見廻組。高い着物を着飾る、ただの女じゃないことはわかっていた。
しかし曲がり角をまがった瞬間に、消えていたのだ。
あれ、一瞬で・・・?

もちろんそこであきらめる俺では無い、無いのだが・・・

「あれはすごかったよな」
「あんな小さな女の子があんな食べて・・・」
「しかし、またえらく色白な女の子だったなあ。」

・・・ビンゴ。

「なあ、その女の子はどこで見ましたかぃ?」
「ああ、それなら・・・」





































「めちゃくちゃ美味しいアル〜〜〜!」
「それは良かった」

兎は、店の奥で兎を超す高さのパフェを食べていた。
声から、笑顔でほおばっているんだろうなあ、と予想つく。
見廻組の女は、そんな兎を見て微笑んでいる。
くそう、そこは俺の場所だっての。

「見つけたぜぃ」
「あっ、サフォ」
「いっかい飲み込め」

ごくごくごっくん。
リスみたいに膨れた頬は、大きな大きな嚥下音でぺしゃんこになった。
やっぱりこいつは面白ぇ。

「なんでサドがここに居るアルか?」

今度はチャイナに質問された。
それが先ほど見廻組から聞かれた質問と同じだった。

「てめーを連れ戻しにきたんでぃ」

そもそも神楽は俺と一緒に過ごす予定だった。
そのために休みをとった。
普段はしない仕事にも真面目に取り組み、やっと休みを勝ち取ったのだ。
いつもは十分な休みが取れない分、今回はかなり頑張ったほうだ。
一日だけ・・・そう言っても、神楽は嬉しそうだった。
その笑顔は可愛くて。
頑張ったかいがあった、そう思った、なのに。

なのに・・・!

「・・・戻るぞ」
「あ、私のパフェが〜」
「・・・させない」

未練がましくパフェに手を伸ばす神楽を遮って立たせた。
しかしそこで大人しくしている女でもなく、ギロリと睨まれながらもその手は神楽の腕をつかんでいた。

「こいつは俺と過ごすんでぃ」
「私と過ごすの」
「・・・」


男1人と女2人が取り合っている。
文字にすれば男を取り合う2人の女、と思うんだろう。
しかし、現実は“女1人を取り合う男と女”、だ。

「・・・分かった」
「あ?」
「今日は諦める」

す、と手が離れた。
感情の読めない目をした瞳と合った。

「お、おい・・・?」

今の今まで神楽を取り合っていたはずなのに、いきなりあきらめるのか?
確かにそっちのほうがいいが・・・
いきなりのことで拍子抜けだ。

「・・・今回だけ、だから」
「・・・・・・」

このやろっ・・・

しかしこの手を使う手はねえ!
ぐい、と神楽の腕を引けば、簡単に胸におさまった神楽の小さな体。
じんわり、と温かくなった。

「行こう、神楽」
「ウン・・・」

神楽が一度振り向くも、俺は気付かないふりをした。


































「・・・」

夜兎族の女の子と、真選組の男の背を見送っていたが、それも扉を閉めれば見えなくなる。
ふう、と一息ついてテーブルを見れば、神楽が食べ残したパフェ。
まだまだいっぱい残ってて、座れば見上げるくらい。

「・・・美味しい」

それでも、もったいないから食べてしまおうかな。
このぐらい、食べれるし。

「・・・」

もぐもぐ、ごっくん。もぐもぐ、ごっくん。
それを繰り返した。
そして思いだしたのは、先ほどの神楽との会話。


『実はネ、沖田って私のために頑張ったんだヨ?』

仕事きらいなのにネ、と食べる手をとめ、照れ隠しのように頬をかいた。
それはまさしく“乙女”だった。
なんとなく、悔しくもあった。
けど・・・

「今回だけは譲ってあげる」

顔の赤い神楽に免じて。
でも、負けるつもりはないんだから。




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