特別な品 2

□場違いな二人と、場違いな私
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男鹿辰巳。
不良高校に通う、一年生。
喧嘩は強い。
なんと、石矢魔最強と言われた東條をも退けたのだから。
それだけでも目立つのに、彼にはさらに目立つ要因があった。

「ダダダっ!」
「へいへい、大人しく帰りますよっと」

一つ目。
不良高といえど、ここは学校。
そんな中に存在する“赤ん坊”ことベルちゃんは、殊更異彩を放っていた。

「早くせんか、馬鹿者」

二つ目。
さっきも言ったが、ここは不良高。
それに似合わず、金髪碧眼女子であるヒルダさんも異彩を放ち・・・

要はベルちゃんもヒルダさんも“場違い”なのだ。

「わーってるよ、たくっ」

そんな異彩に囲まれた男鹿は、悪く言えば一般人。
しかしなぜか周りはこの三人をこう言うのだ。

“男鹿夫婦とその子供”と。

実際ベルちゃんは二人の血を引いていないし、そもそも二人に結婚すらしていない。
なのに、
「説明するもの面倒だ」と、そんな噂を気にしない。
だからあの三人は“家族”なのだ。

・・・けど、私は全然面白くない。
私は夫婦じゃないってことも、ベルちゃんとヒルダさんが悪魔だってことも知っている。
 
もちろん二人に恋愛感情が無いことも。

「ねえ、男鹿」
「ん?」

帰ろうとする男鹿を呼び止めれば、鋭い視線を感じた。
・・・ヒルダさんだ。
でも私は知っている。
この視線は嫉妬でもなんでもない。
“坊ちゃまが待っておられるのに早くせんか馬鹿者”な視線だ。

「あ、あのね」

沖縄での事以来、がんばろうって決めたじゃない!
というか、勢い余って裾をつかむって意外と恥ずかしい・・・

「おい男鹿」
「だからごはん君だろ!?分かってるって」

中断されるように通ったヒルダさんの声は、思いのほかダメージがあった。

「すまねえ邦枝。また今度な」

すまなさそうに、後ろを振り向きながらもヒルダさんのところにいく男鹿に、私は何も言えなかった。

「・・・何よ、あれ」

名前を呼ばれただけで、ヒルダさんが言いたい事がわかるだなんて。
前に、その話題に触れていたのかもしれない。
だけど、

「何微笑みあってんのよ・・・」

男鹿とヒルダさんは、種類は違えど“クール”だ。
慈しむような笑みなんて、ヒルダさんがベルちゃん以外に向けることなんて。

彼らの表情は、“場違い”な私を酷く傷つけるものだった。







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