特別な品 2
□こんなに近くにいるのに気付かない奴は気付かないもんだ、それが男であろうと女であろうと
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２月中旬、というかど真ん中の今日、２月１４日。
お菓子メーカーの陰謀の日と言われようと、司祭処刑の日と言われようと、俺にとっちゃ関係ねえ話。
ま、色んな意味で“戦争”の日だが。
「これ、神楽ちゃんにあげるんだ〜」
男が持つ、四角い箱。
もっと言えば、リボンで飾られた箱。
もっと言えば・・・答えを言えば、バレンタインチョコ。
それが今、
渡される側である男の手の中にある。
「ふーん、それ、“神楽ちゃん”にあげるんですねぃ」
「ひっ！」
所謂“逆チョコ”というやつで。
不本意だが・・・自称“歌舞伎町一の美少女”である神楽、チャイナ娘はまあモテる。
（俺には負けますがねぃ）
少しでもチャイナ娘の目にとまろうとチョコ片手に近づく輩はたくさんいるのだ。
「それ、ここに置いていきなせぃ」
「は、はいいいいい！！！」
とまあ、地味にやっているわけだが。
「今年はチョコがそよちゃんからの１個しか無かったネ。だからお前のくれヨ」
「普通てめえがくれるだろ」
ま、てめえのなんていらねえけどな、なんて付け加えておく。
「なんだとサド野郎！」
嘘、本当は欲しい。
しかし、悲しきかな。言えずにいる。
つうか、俺の山崎並の努力に感謝してほしい。
「わ、これめちゃくちゃ甘いネ！」
「てめっチャイナ！」
やっぱりこいつは色気より食い気、花より団子な奴でぃ。
まあ、この“山”の処理には困ってはいたのだが。
「好きなだけ食べなせぇ」
「え、いいアルか！？キャッホー！お前いい奴だナ」
「・・・」
あ、俺今釣られてる。
こいつの、笑顔に。
「お返しは３倍でお願いしまさぁ」
「ホワイトデーは男がくれるものネ」
「じゃあ返せ」