特別な品 2

□風のみぞ知る
1ページ/2ページ

「あの、これ・・・!」

知らない女から渡されたもの。
女の顔は赤い。

「まあ・・・ありがと」

そう言えば、女は勢いよく顔を上げ、若干涙を浮かべながら礼を言われた。







































「ほう、貴様は案外モテるのだな」

授業が終わり足早にどこかに行く主君とその下僕・・・もとい、男鹿辰巳。
人づてで探して屋上にきてみれば。

「いや、俺じゃなくて」
「しかし貴様に渡していたではないか」

それはまさに女が男にチョコレートを渡す、告白シーン。
それなのにこの朴念仁は何も思わないというのか。

「だから、これはベル坊のだっての」
「…坊ちゃまの?」

まさかの言葉に目が点となった。
それを証明するかのように目の前に出されたチョコレート。

「…本当だ」

小さなカードには、きちんと“ベルちゃんへ”なんて書かれていた。

「ベル坊一人で受け取れるわけねえだろ」
「そうだが・・・」

確かに坊ちゃまの人気は、ここ、聖石矢魔に来てから急上昇である。
あの女が着ていた制服は正に聖石矢魔で。

「何、もしかして嫉妬?」
「なっ・・・!そんなわけないだろう!」

ニヤニヤするな馬鹿者が!!

「で、お前は?」
「ふん、ちゃんと用意してある」

カバンから取り出し、男鹿に投げた。もちろん坊ちゃまに当たらないようにな。

「なんだよ、買ったやつかよ」
「悪いか」

・・・まあ一応、人間界での自分の腕というやつは自覚していて。

「貴様に倒れられたらかなわんからな」

坊ちゃまのためだ、と付け加えると、男鹿はため息をついた。

「・・・今年はこれで我慢してやる」

おもいっきり不機嫌な表情である男鹿に疑問である。
あれ程「お前は料理するな!」なんて言うくせに。








「ヒルダの“手作り”ってのが欲しかったんだけどなあ」

愛されてる感じ?



なんて呟きは、風でかき消され、知ることは無かった・・・


























次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ