小説2

□摂理
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はぁ、行きたくねえな・・・

それはそれは重たいため息であった。
学校内でも大柄な男・・・火神大我は背中を丸め、またため息をついた。
その後姿は、いつもの荒々しさはなく、どんよりと曇っていた。
肩にかけられたエナメルの重さ以上に、火神大我を苦しめるのだった。



4日前。

火神大我に衝撃が走った。
ブルブルと大きく両手は震え、その手に持つ一枚の紙に皺が出来るほど。
そんな様子の光に、影である黒子テツヤは前々から感じていた嫌な予感が当たったと思った。
というかわかりきっていたが、違ってほしいとも思っていたのに。

「補習行き、ですね」

ピシリ、と火神は石になった。

その手に持つ紙に書かれた数字は、火神大我にとって死刑宣告と同じであった。

火神大我は、所属する部活の、主力メンバーだった。
だから学校以外ではバスケに費やしたい。
が、ここは学校で、火神大我は学生だ。
学生の本業は勉強だ。
それを怠れば、週末の補習。
簡単な摂理。

しかし誠凛高校教諭(数学)は優しかった。
次の試験で一定の点数であれば、補習は免除にしてくれるというのだ。
初めて先公に感謝した瞬間だった。

しかしその数時間後、火神大我は地獄に落とされるのだった。

「カントク、火神君が補習に決まりそうです」
「ちょっ、黒子っ!!?」
「ほーぅ?補習、ねえ・・・」
「ひっっっ!!!」

『火神大我おバカ脱却大作戦』が始動したのだった。



場所は練習場所である体育館のステージ。緞帳は下ろしてある。
バスケができる楽しみの場所なのに、いまや地獄の場所である。足が重たい。

「ちーっす・・・」

しかし歩いていれば、自然と目的地まで着いてしまう。
どんよりした気持ちのまま行けば、既に教科書を広げた主将が待っていた。

「遅いわボケェ!!」
「ぐはっ!!」

訂正、“クラッチタイムを発動した”主将待っていた。

「オラ、とっとと勉強するぞ!!」
「い゛っ・・・・は、はいぃぃぃ!!」

ゲシリ、と思いっきり蹴られた。
痛くてたまらないが、クラッチタイム発動の主将に食い掛かるほど、俺も馬鹿じゃない。
それにこの人の歴史ラブっぷりにより、歴史だけは学年2位のカントクの成績より良い。
だから今日は歴史か・・・とげんなりしていれば。

「・・・・英語・・・?」

それなら別に主将じゃなくてもいいんじゃ。
というか、頭の良いカントクに教えてもらったほうがいいんじゃないだろうか・・・・


「バカヤロー!誰がカントクと2人っきりにさせるかよ!!」
「いや、別にカントクと2人で勉強するわけじゃねえし!!」

何言ってんのこの人!











































「・・・本当分かりやすいよな、日向は」
「本当です。・・・それに比べて僕の光は」
「あれは気づいてないよねー」
「・・・(コクン)」


ステージ入口で、先輩と己の影がこっそり見ていたなんて知るのは、また別の話。




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