小説2

□それはもう自然に、
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『本当ごめんねっ!!』
「いや、大丈夫だから・・・」

50近くの男に殴られた、それはもう思いっきり。
殴られた理由も重々承知している。
男の・・・カゲトラさんの大事な大事な娘を夜遅くに帰したことだからだ。
目に入れても痛くない程溺愛している彼女だったから、少し考えればそうなることは予想に容易い。
あーやべ、今も痛い、タンコブが。

あの後木吉と別れて家に着いた。
とりあえず風呂に入ってご飯を食べて自分の部屋につくと同時に右ポケットに入れていたケータイが鳴った。
表示は相田リコ。
なんだろうか、と通話ボタンを押せば、いきなりの謝罪であった。

『本当パパったら手加減しないからっ・・・』
「あー・・・」

それは俺たちのせいもあるしなー・・・とできたタンコブをさすりながら答える。
それよりも、帰ってからもカントクの声が聴けるのはちょっと嬉しかったり。
あーやばい、にやける。
良かった、電話なら表情は見えない。

『本当?』

確かに痛いけど、今はカントクの甘い声に悶えてしまう。
小首を傾げて、心配そうに眉を下げて。
想像したらこっちまで照れてしまう。

「ほんとほんと」
『それならいーけど・・・』
「それより明日、がんばろうな」
『もちろんっ』

電話口からでも分かる、カントクの笑顔。
やっぱりカントクは笑顔が一番だ。
・・・と言えたら苦労はしないけれど。

『じゃ、また明日』
「おう、おやすみ」

・・・・・・はー、終わった。
内容としてはなんてことない雑談だったけど。

やっぱりカントクの声って安心するなー・・・

スマホ画面の“相田リコ”の表記をみて、一息ついた。
自然と二やついてしまう。
名残惜しい気もするが、画面の“終了”を押そうとすれば、いきなり画面から声がした。

『ちょっ、ちょっと待ってっ』
「・・・ん?」
『さっきの・・・本当?』
「さっきの?」

さっきの、とは何だろうか。
また明日、おやすみ。に何があるのだろうか。

『あ、それより後の・・・』
「あと?俺、何か言ったか?」

ふむ、と考えてみるが特に何も思いつかない。
別に何も言っていない気がするが・・・

『い、言ったじゃない、今』
「今?・・・えーと、何か言ったか?」

本当に思い出せなくて、きいてみた。
そしたら電話口では言いにくそうにカントクは言葉をつまらせた。

『・・・本当に、日向君が言った事なんだからね?』
「だからなんだよ」
『その・・・さっき、日向君が、』
「・・・?」

やっぱりカントクの声って安心するな・・・て。


「・・・・・」











―――――――――――――――え。
えええええぇぇぇぇぇえぇええええぇぇぇえ!!!!!???




「おおおお俺、そんな事言ったのか!!?」
『う・・・・ぅん・・・・』


マジかっ!!?
そんなまさか、俺的には心の声だったのにダダ漏れとか恥ずかしすぎるというかかっこわりっ!!
というか次会うの気まずすぎるんだけど!!

『・・・あ、あの、さ・・・』

やばい、カントクまで緊張してらぁ。てかそりゃそうだ。
そんなことを言われたら、相手がカントクであっても驚くだろうし。

『あ、明日ねっ!!!』
「お、おうっ!!」

やばいこれ!
カントクも相当だ。
勢いよく切られた。

明日、どうしよう――――




次の日、思いっきり意識してカチンコチンの状態のカントクと主将の姿に疑問符を浮かべる多数の部員と、何かを悟った鉄心がいたとかいなかったとか。



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