小説2
□ユメノキミ
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俺、お前の事が・・・
えええ、何コレ、なんで日向君が顔を赤くしているの。
まさかね、まさかよね、そのまさか?
初めに認識できたのは、見慣れた天井だった。
「ゆめ・・・?」
見渡すも、どこにも日向君の姿は無い。
さっきまで自分たちはいつもの制服をきていたのに、今はふわふわしててお気に入りのパジャマ姿。
念のためほっぺたをつねってみる。・・・痛い。
何故か心が落ち着いた気がした。
「って、失礼な話よね」
いくら夢の話とはいえ、真剣に言っていた日向(夢)に失礼だ。
といっても、所詮夢の話。
現実ではない。
なんでこんな夢をみたのかしら・・・
首を傾げながらも、朝の準備をするために部屋を出るのだった。
ボールのドリブル音、バッシュ音、掛け声。
様々な音が響く体育館で、私こと相田リコは本日もホイッスルを響かせる。
よく他校からは≪高校生の女監督サン≫なんて馬鹿にされるけれど。
それでもこのバスケ部は私についてきてくれる。
そんな期待に私は応えたい。
だから今日見た夢なんて…
「カントク?」
だから・・・その・・・だから、ね?
「ななな何かしらっっ!!!?」
思わず後ろに飛びのいてしまった。
声をかけた・・・今日の夢で出てきた日向君がこちらを心配そうにのぞきこんでいたのだ。
急に近くなった距離に心臓が飛び跳ねた。
「?カントク、疲れてるのか?」
まあ最近はかなり力入ってるしな、と余計な心配をされてしまった。
「ち、違うのよっ!?」
「そうか?」
だって・・・と言ったところで口をつぐんでしまった。
貴方に告白される夢をみました。
だなんて言えるわけ無いじゃない!
日向君は首を傾げながらも、みんなに集合をかけるのだった。
あれはヤバいわよね――・・・
ゴロンと横になり、少し体が跳ねた。
今は様々な音が飛び交う体育館じゃない、自分の部屋のベッドの上だ。
まさかバスケにまで支障がでてくるとは。
一生懸命やってるみんなに失礼じゃない!
私がしっかりしないとダメじゃない!
一発両手で頬をたたけば、少しスッキリした。
うん、これで明日からも頑張れる――
ブーッ、ブーッ
いきなり手元のケータイが揺れてこっちも驚いた。
なんとなくだが、“あの人”からじゃないだろうか。
そう確信した。
日向順平
やっぱりか・・・
メールを開くのが怖い。
しかし見てみたい。
ドキドキと、聞こえてくるんじゃないかってくらい脈うちながらも、ゆっくりとケータイを開いた。
お疲れ様
なんか疲れているみたいだったけど、何かあったら言ってくれ
ため息なんて似合わねぇからな
じゃ、また明日
「なによ、日向君のくせに・・・」
どうしてメールだとこんなにカッコイイのだろう。
というか疲れて(見え)るのは夢の中の日向君のせいなのに。
「明日・・・練習3倍にしようかしら」
その日の夢は、日向君に告白されて私も了承しちゃう夢だった。
彼の背中に回した手の、背中の感触は妙にリアルだった。
起きた時の衝撃を忘れない。
そしてその日の練習は5倍になったのだった。