小説2

□隠しきれてねぇんだよ。
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「ワイールっ」
「うわあああ」

頭が良くて運動音痴な幼馴染。
天真爛漫でダンス好きな異国の少女。
そんな2人は、今日も朝からいちゃついている、それはもう思いっきり。

「もうすぐ朝ごはんだからなー」

俺から言わせればじゃれているしか見えない2人にそう言って食堂へ。
俺もいい加減慣れたと思う。
まあ、キールが勉強→メルディも手伝う→結局徹夜
そんな流れができつつあった。
メルディにとっては、キールお疲れサマー、のハグなのだ。
だから、メルディはいちゃついているという自覚は無い。
どこかオープンなセレスティアン、というのもあるが、これは本人の性格も大きいのだろう。
それに比べてうちの幼馴染は・・・

「あれ、キールとメルディは?」
「まだいちゃついてる」

そう言えばもう一人の幼馴染、ファラは苦笑いを浮かべた。
ファラは朝食のハムエッグを皿に盛っていた。

「うまそ〜」
「はいはい、じゃあ箸用意して」
「おうっ」

ファラの料理はいつも美味い。
この旅の一番の楽しみといっても過言では無い、と思う。

「ふぁ、ファラ・・・」
「お疲れ様、キール、メルディ」
「はいなっ今日もいっぱいお勉強できたよー」

あ、もう一つの楽しみがきた。

「わ、キールのクマすごいよ!?寝なくて大丈夫?」
「ああ・・・」

確かにこいつの顔はすごいことになっていた。
しかもフラフラ。
いくら徹夜に慣れているからといっても、旅をしながらはきついものがあるのだろう。
しかもこいつはパーティ内でも体力が無いほうだ。
・・・これは一回休憩をはさむのが賢明か。

「キール、だいじょぶか?」

こてん、と首を傾げるメルディは可愛いと思う。
それは間近でみていたキールには破壊力抜群だったようで、白かった顔を一気に、爆発させてしまったが。

「キール?」
「だだだだだいじょうぶに決まってるだろっ!!」

あーおもしれぇ。
なんてわかりやすいんだキールは。
いつも口で負けているキールの情けない姿は面白い以外の何物ではない。

「だから“ひざまくら”をするって言ったよー」
「「膝枕!!?」」

これには俺もファラも驚いた。
まさかそこまで進んでいたとはっ・・・

「ちっ、違うからなっ!!別に僕は望んでいなくてメルディが勝手にそう言っててけどもう少しで分かりそうだったから断って―――」

あ、結局膝枕してないのね。
やっぱりヘタレだなこの幼馴染は。
そう思ったのが分かったのか、キールからは睨まれたが。

「あとでひざまくらしてやるからな、キール」
「いやっ、僕はいいっ!!」

と言いつつ嬉しそうな幼馴染に、俺はひっそりため息をつくのだった。




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