小説2

□鈍感同士の勘違い
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自分でも意外だな、と思った。
彼女の隣は、眼鏡をかけてクラッチタイム発動する主将か、ぼんやりしてそうで意外と強かな大男なのに。

「今日はありがとね、伊月君っ」

なんと今日は俺だった。
まあ、一応中学からの知り合いなので、俺たちが並んでいようが不思議ではないが。
だが高校に入れば、一気に主将・・・日向か大男・・木吉の比率が高くなったのだ。
まあ、それについては特に不満はない。
どちらも嬉しそうではあるし。

あいつらほどの身長差はないが、やはり男女の差は存在する。
目線はどうしても下に向く。

「どういたしまして」

この人は本当に喜怒哀楽が激しい。
そこがいいところではあるのだけれど。


でも、それは勘違いしてしまうよ?


「何楽しんでんだよ、伊月・・・」

日向が。


「ん?もちろんカントクとのデートを」

冗談交じりにカントクの腕をとって組んでみた。
カントクはそうくるとは予想していなかったのか、目を見開いている。
しかし俺と腕を組んだところで、もう伊月くんったら、と笑顔を浮かべる。
ほら、ね。

「そうよ日向君。私たちデートしてるんだから邪魔しないでよねっ」

やっぱりこの人は面白い。
カントクにとってこのやり取りは冗談に過ぎない、もちろん俺も。
だけど、冗談が通じないのが居るんだよなぁ、目の前に。

「オイコラてめぇふざけんな」

だから日向が怒っている理由なんて知らないんだろうな。
こればっかりはご愁傷様としか言えない。

「別にふざけてないわよ、ね、伊月君っ」
「あぁ、カントク」

そうだぞ日向。
ちゃんと言わないとカントクは気づかないんだから。
しかしこのヘタレ主将は言えないだろうなあ。
というか、言えたらもっと早くに言えるはずである。
そしてこんな事にもなってないはずだ。
今日も不発か、友人の悲劇に合掌した。
でもまあ、

「じゃあ今度は日向とデートしてみたら?」

今日は俺だったからさ。
さも“なんでも無い”ようにいえば、サッと頬を赤くするカントク。

「日向君はダメ!!」
「どうして?俺とはできたのに?」
「ダメったらダメ!!」

あー、俺ってなんて友達思いの良い奴。
というかカントクわかりやすすぎ。
無意識でも困ったものだねこれは。

「・・・・・・ぐっ」
「おい、日向?」

っておい、なんで日向くやしそうなんだよ。
俺がせっかくフラグ立ててやったのに。
もしかして、

「お、俺とは無理なのか・・・?」

って違ーーーう!!
そういうことじゃなくてだな・・・
ああもうだめだこいつら。

片方は無意識に意識していて、もう片方は意識してるくせに気づかない、なんて。

「とりあえず伊月、明日の練習は5倍な」
「なんでだよ!!」

え、なにコレ俺だけ損してね??

カントクとのデートも考えものだな、そう思った冬のある日の事。









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