小説2

□彼女のお陰で今日も平和です。
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原作は11巻、アニメは43Qまでの情報。

「はあ・・・」
「ど、どうしたんだよ、日向・・・」

終業のベルがなり、今はバスケ部キャプテンこと日向順平と体育館へと向かっていた。
もちろんバスケの練習のため。
なのに、こいつは重たいため息を吐いた。
そしてどす黒い雰囲気を纏っている。

「いや・・・何もねぇ」

いやいやいや、何かあるだろーよ!?
しかしこいつは重たいため息をつくばかりで話す気は無いらしい。
・・・まあ、バスケしたら少しはマシになるかな。
練習に影響しなきゃいいけど、なんて思いながら歩いていたら、遠くに見知った後姿が見えた。

「木吉と・・・カントク?」

ピクリ、と日向の眉が動いた。
ん?

「あ、日向君に伊月君!」
「よっ」

歩いているのだから、徐々に近づいていくのは仕方ない。
俺たちに気付いたカントクと木吉は、にこやかに手を挙げた。
おいおいおい、こいつのどす黒い気が見えないのか?
木吉は気づかなさそうだが、カントクも気づかないの?
そういやカントクも“こういうの”には疎かったっけ。

「今から体育館行くんだよね?一緒に行こうよ」

カントクのスマイルが眩しかった。
ああ、いっそのこと、日向の周りの空気を浄化してほしい。
未だどす黒い、いや既にまっ黒な空気の中心部にいる日向をみた。
反応を示さない日向に疑問をもって首を傾げるカントク。

「なあ、伊月」
「ん?」

ススス、と俺の横に身長190p越えの大男が横にきても特に驚きはしなかった。
まあ、こいつ並の選手と渡り合ってきたからかもしれない。
…次の言動には驚いてしまったが。

「ちょっと抜けようか」
「は?」

そう言われてガッと腕を掴まれた途端。

「じゃあ先行ってるからな〜」
「ちょ、おい!」

無冠の五将「鉄心」の木吉に力で勝てるわけもなく。
温厚な木吉からは想像できないほどの猛スピードで引っ張られた。
痛いが、木吉の顔をみれば、さもいたずらが成功した子供のようにイキイキしていた。
あーあ、これは何いっても無駄だ・・・とため息交じりに後ろ・・・
カントクと日向のほうをみれば、日向の表情に変化があった。
というか、まっ黒な空気が、桃色になっていた。

あー・・・なるほど。

もしかしたら、こいつ気づいてたのか・・・?
あの鈍い木吉ですら気づくのか。まあ、バレバレなんだけど。
ということは、気づいてないのはカントクだけかよ。
あ、日向もか。


「たくっ――素直になれっての」
「だよな」

さて、こいつらが気づくのはいつ――――





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