小説2

□密かな楽しみ、見つけました。
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「ただ今戻りました、坊ちゃま。・・・坊ちゃま?」

今日は母上様と一緒に“エイガ”というものを見に行った。
学校が終わってからね、と言われ、帰る頃には外が暗くなっていた。
エイガ…大きなテレビ画面、大音量、大迫力。
もちろん家でみる昼ドラもいいのだが、たまにはこんなのもいいのかもしれない。
これはぜひ坊ちゃまにも勧めなければ。

ガチャリと“あの男”…男鹿の部屋の扉を開けるも、そこに人は居らず。
……いや、居た。

「…風邪ひいたらどうする気だ」

そこには、ベッドで大の字で寝る主君とその親代わりの男。
いくら暑くなってきたとはいえ、窓を全開に開けて、扇風機を回して、ついでにシャツがめくれて
お腹まで出してたら、いくらこのバカでも風邪をひくことは容易に想像ついた。
そして風邪を引いたら坊ちゃまに多大な迷惑がかかることをこいつは知っているのだろうか。

「おい、男鹿」
「…、ぐぁ」

アヒルか。

この間坊ちゃまが見ていた人間界の“動物大百科”に載っていた、動物の鳴きまねにそっくりだった。
といっても、男鹿はそれ以上の反応は見せなかった。

「…」

なんだか面白くない。
こんなに近づいて、でも男鹿は依然眠ったまま。
物音を立てないようにしていたのもあるが、すぐ近くに座りこんでもその瞳は開けられることは無かった。


「・・・起きない貴様が悪いのだからな」

ぷに。
意外と柔らかった。

「ん・・・」
「っ!!」

一瞬起きたのかと思った。
しかし双眼は開くことは無く、一瞬だけ額にしわがよっただけ。
また穏やかな寝顔となってほっと胸を撫で下ろした。

って、私は何をしているんだ!!

しかし、柔らかい。それを知ってしまった。
さっき触れていた人差し指を見る。
柔らかく、そして適度な弾力。
もう一度触れてみたい。
しずかに手を伸ばせば、すぐに触れた男鹿の頬。
やっぱり柔らかくて、やみつきになりそうだ。

これはいい暇つぶしを見つけたかもしれない・・・
なんて自分に言い訳して。

男鹿の頬の柔らかさに酔いしれるのだった。











































































―――――…え、何これ。
気付いた時には、ヒルダにほっぺたを指で押さえられていた。
時に離れ、時にひっつき。

「・・・起きない貴様が悪いのだからな」

いや、起きてるんですけど!!

けど目をつぶってても分かる、ヒルダの穏やかな雰囲気。
ヒルダは俺が寝ていると思って、無防備になっているのだ。
ここで起きでもしたら、すぐに“侍女悪魔のヒルデガルダ”に戻ってしまうかもしれない。
なんとなくもったいない気がする。

まあ、いっか…

なんだかんだ言いつつ彼女の好きなようにさせてしまう自分が居て、ちょっぴり
頬が赤くなるようだった。








ヒルダが気付きませんように!


あとがき
というわけでいかがだったでしょうか?ほのぼのめざして玉砕。
男鹿のほっぺたをつつくヒルダ、というだけなのですが、難しかったです。
…楽しかったですけどw
実はもう1つ案がありまして。
途中まで(ヒルダサイド)は一緒の内容なので、次ページよりおまけとして載せます。



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