小説2

□合わせて一つ
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風に揺られる緑・・・笹。
笹の枝を飾るのは、色とりどりの色紙。
この季節ですることと言えば、馬鹿でもわかる。

「七夕?」

そうか、こいつらは“悪魔”だったんだ・・・

まだ何も書かれていない色紙を持ち、ヒルダは首を傾げた。
だよな、分かるわけ無いよな。

「七夕っていうのは・・・」

と、ここで口が止まってしまった。
あれ、誰が出るんだっけ・・・
お、おりっ・・・おり・・・あれ、誰だっけ?あと・・・
ああもういいか!

「とにかくそこに願い事を書くんだよ!」
「はあ?」

更にわからない、というような視線と目が合ったが、あえて無視!
右手にペンを握らせた。
しかし・・・


「おい、なんだその字は」
「む?“地球が滅びますように”って書いたのだが」
「いやいや、読めないから!」
「ああ、だって魔界の文字だからな」

ふふん、と鼻をならした。
が、俺にとっちゃ何の自慢にもならねえよ。

「日本語を書け」
「書けるわけなかろう?」

読めはするがな、とヒルダは息をはいた。
まあ、こいつらがきて日本語を勉強する時間なんて無かったから仕方ないとはいえ。

「まあいい」

書けないのなら、書けるようにするまでだ。

「とりあえず座れ」
「ああ・・・・・・、――なっ・・!」
「ちょっと黙ってろよ」

回り込んで、右手を包んだ。
もちろん、後ろから。
金の髪が目の前にあるなか、視線は右手へ。
あ、ちなみに左手はヒルダの腰へ回した。
…柔らけえ・・・
ヒルダの甘い匂いと特有の柔らかさに若干心がぐらつきながらも、当初の目的を果たそうとした。

「おいっ、離せっ・・・!」
「だから黙っとけって」

緊張して全身に力が入りまくるヒルダを可愛いなと思いつつ、ペンを走らせていく。

『男鹿辰巳と、ずっと一緒にいれますように ヒルダ』

「できた」
「なっ!貴様何を書いておる!!」

そういや文字は読めるって言ってたっけ?
まあ、別にいいけど。

「で、一緒にいたくねえの?」
「私は・・・!!」

ヒルダが俯いた。
ふと見えた耳と頬は、今までに見たことがないくらい・・・真っ赤だった。

「俺は一緒に居たいけど」
「わ、私だって・・・!」

ああ、やっぱりこいつは可愛い。

「じゃあ、俺も書くから」






もちろん、こいつと一緒に居れる未来を。




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