小説2

□あてられました。
1ページ/2ページ


右を向けば、
『はい、アーン』
『うん、おいしっ』

左を向けば、
『ほら、ここにクリームがついてる・・・ん、甘』
『もう、○○君ったらぁ』


どうしてこうなった!!!!
































時間を遡ること20分前。


「大当たり〜」

カランカランと鐘の音が、商店街に響いた。
そして笑顔で一枚の紙が渡された。
そこには『石矢魔スイーツ店カップル限定引換券』
とデカデカと書かれていた。
どうやら、石矢魔の全てのスイーツ店対象らしい。
それを侍女悪魔・・・ヒルデガルダが引き当てたのだ。

「なんだこれは・・・」

もちろんそんなものに興味がない・・・というか知らないヒルダは首を傾げたが、
くじ引きのスタッフはそんなのお構いなしに『おすすめの店』だのなんだの話しはじめた。
勧められた店はすぐ近くにあったし、スタッフの話を目を輝かせて聞いていた
ベル坊もいたせいか、そのままその店へと行くことになったのだ。
で、入ってから後悔した。

『うふふ』
『あはは』

どいつもこいつも、ハートを出しやがって・・・
装飾すらもピンク一色。
最初に気付けばよかったんだ。そしたら絶対に入らなかったのに・・・!

「おい、男鹿。何を頼む?」
「あ、ああ・・・」

ピンクの中に、黒は異色だった。
しかし黒・・・ヒルダは気にせず、メニューを広げてベル坊と選んでいた。
こいつの神経すげえな・・・なんて思いつつ、あまり甘いのを選ばないように・・・

と感じた、無数の視線。
殺気・・・では違う。現に、目の前のヒルダは気付かずベル坊と目を輝かせている。
なんだ・・・?
周りを見渡せば、男たちの目と合ってしまった。
大抵はびくつかせ、下を坊に俯いた。
そこに彼女が心配そうに声をかけていた。
もしやこいつら・・・

またヒルダとベル坊に視線を戻せば、頼むものを選び終わったのか、メニュー表を閉じていた。

「おい、何を食べるんだ?」

首を傾げ、きいてくる。
その姿は・・・美味しそうだった。

「お前」
「・・・・・・・・・・・・・、は?」

たっぷり時間を使って、けど意味を理解したのか次第に赤くなるヒルダの顔。
うわー、なんか可愛い、かも。

普段見られない彼女の姿に気をよくし、いまだ固まってるヒルダの頬を右手で包んだ。


「想像した?」
「っ!!!貴様っ・・・・!」

更に真っ赤になるヒルダをみつつ、ちらりと周りを見渡せば、がっくりと肩を落とす男たちがいた。
つうか、何期待してんだバカ。

「ま、本当のことだけど」
「なっ・・・!?」
「後で甘いの食べるから今はいいや」



あ、もちろんヒルダを、な。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ