小説2

□女の子たちの時間
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「というわけで、」

片手にジュースの入ったコップ、片手にデコレーションしたナイフケース。

「今から女子会を始めま〜す♪」

ごくごく普通の少女が、声高らかに音頭を取るのだった。







































「というか、なんで私の家なのよ!!」

慣れない仕事をやっと終えて、今日はゆっくりアロマでもたいて休みたかったのに。
なぜか今、私のクラスの生徒たちが私の部屋に居る。
大量のお菓子、ジュースのペットボトル、そして暗殺道具・・・
まあ、最後のは不要のものとみなされ、すぐにそれぞれのカバンに片づけられたが。
私は世界を股にかける暗殺者・・・プロだから慣れてるのは当たり前。
しかし、ついこの間まで一般学生だったこの子たちまで慣れてるものだから、
いつ何が起こるかなんでわからないわね。
・・・って話が逸れた。

「だってこんな話、家じゃできないんだもん」

いや、女子会なら家でもできるでしょうが。

「というか、ビッチ先生の恋バナ聞きたいの」

それが本音か!・・・まあいいわ。

「私の話はすごいわよ?なんたって世界の・・・」
「あ、そういう仕事の話はいいから。プ・ラ・イ・べ・エ・ト!の話。」
「はあ?」

一体なぜそんなことを聞きたがるのかがわからない。

「そうねー・・・と言っても、ねえ・・・」

前のめりに聞いてくる女子たちに若干体をそらした。
目がマジだ、その瞳で軽く一人は暗殺できるかもしれない。

「私はー・・・」

と言いかけた所で、私は言葉をつぐんだ。

私、最近恋愛してないー・・・・!!!


というか、“仕事”で演じてただけだから、本当の恋愛ってしたことあるかしら・・・?
今まで殺してきた“恋人”たちの顔が頭の中で流れた。
いやいやいや、そいつらは恋愛対象にはならない。

「ビッチ先生?」
「!!」

答えない私にのぞきこむ女子たち。
その目は期待に満ちていた。


『仕事以外じゃ忙しくてね』
『じゃあしてないってこと?』
『なーんだビッチ先生』
『『つまんな〜い』』
『!!』

それだけは阻止しなければ・・・!!

「そりゃもうすごいわよ?毎日知らない男からの貢物とか家に届いているんだから。
あと毎日フルコースよ、もちろん男たちのおごりでね」
「・・・太るよ?」
「何その感想!?」

まさかそんな返しとは。
しかしバカ正直に言えるわけないものね。

「じゃなくて、ビッチ先生から好きになった人とか居ないの?」
「私、から・・・?」

ふむ、と腕をくんでみた。
しかし思い当たるのは・・・

「あ」
「え?誰誰??」
「えっ、あ、違っ・・・!!」

まままさかあの黒髪仏頂面男が思い浮かぶなんて!

「あ、分かった、か
「だだ、誰がカラスマなんか!!」

ほとんど叫びだった。
しかし、はたと気づけば、目を点にして見上げる生徒たち。

「・・・へ〜え、ビッチ先生」
「そーなんだ、ふ〜ん」
「な、何がよ!!」

視線に耐え切れず急いで座るも、好奇の目は注がれた。

「ま、烏間先生ってクールだし、かっこいいもんね〜」
「だから違っ・・・」

弁解しようとしたら、急にメールを知らせる着信音。
相手は・・・カラスマ。

「きゃ〜、烏間先生じゃん!何て何て」
「ちょっ」

さっきメールの着信を教えてくれたスマホは、あっけなく彼女らの手の中へ。
嬉々とした様子でメールは開かれた。

『明日の英語は中止になった』


「・・・・・・・え」

彼女たちの目が点になった。

「な〜んだ、つまんない」

はい、ビッチ先生、と渡されたスマホ。メールを見るも、内容はさっきと一緒。
・・・ふぅ、よかった。とりあえず安心する。
って、何安心してんのよ私!


「あれ、もっと違うのを期待してたの?」
「ちっ、違うわよ!」

ああもう!今日はなんて日なの!!



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