特別な品

□はじめから隙間は無かった
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なぜこの流れになったかは分からない。
けど密かにガッツポーズしている自分がいた。

まさか男鹿の家にいけるなんて…!


下校中、男鹿の姉に会った。というか話しかけられた。
緊張するわたしをよそにどんどん話を進めるお姉さん。
そしていつの間にか“男鹿の家に行く”ということになってしまった。


「今の時間なら…面白いのが見れるわよ?」


腕時計を見てお姉さんは笑み(…)を浮かべる。


「…?」
「とりあえず行きましょ」


そして流されるまま、男鹿の家に行くのだった…


































「お邪魔しまーす…」


ついんじ踏み入れた男鹿の家。久しぶりすぎて緊張する。
しかも今回は“招待客”だ。

男鹿は居るのかしら…居たら…って何考えてるのよ!今日はお姉さんに言われて…!


「ほら、こっちこっち」
「え!?あ、はい!!」


お姉さんに呼ばれて急ぐ。一瞬不思議そうに見られたが、すぐに切り替えたのかまた笑顔になった。


あれ、この顔どこかで…


デジャヴ…?と思いつつ、お姉さんに言われるままリビングへと入った。


「ほら、あれ」
「ヒルダさん?」


リビングに入ってお姉さんはソファに座る金髪…つまりヒルダさんを指差した。


「ソファに近づいてみて」
「は、はあ…」
「面白いものが見れるから」


ケータイ片手にニヤニヤするお姉さん。
言われた通りに近づくと…


「…!!」
「本当、意地っ張りなんだから」


普段はこんなじゃないでしょ?とケータイをカシャカシャいわせながらお姉さんは言う。
しかし私はお姉さんの言葉が耳に入ってなかった。


「アーイッ」
「ベル坊、パパとママの邪魔しちゃだめよ」


起こしちゃ悪いからね、とベルちゃんを抱き上げ、またケータイを向ける。

逆にわたしの心は急速に冷めていった。

お姉さんのケータイには、ヒルダさんの太ももに頭を乗せて眠る男鹿が写っていた。

悪い言い方で間抜けな表情、良い言い方で安心しきった表情を浮かべた男鹿。

家、というのもあるが、ヒルダさん、というのが一番大きいだろう。
ヒルダさんもヒルダさんで、男鹿の頭に手を添えて眠っていた。


「これで辰巳をからかうの」
「そ、そうですか…」


先ほど浮かべた笑顔…ニヤニヤ顔でケータイを見る。

あ、この顔そっくり…と何故か冷静に分析している自分がいた。


「あの、私・・・もう帰りますね」
「え?もう?」


少しでも早く2人から離れたかった。
挨拶もそこそこに家を出て走った。

頬に熱いものが流れた。







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