特別な品
□レッツ☆バスタイム
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「ふぅ〜…気持ちいいなベル坊」
「アイッ!」
本格的な冬も始まって体が冷えるこの季節。
以前はお風呂嫌いだったベル坊も、いつの間にかお風呂が大好きになっていた。
「ほれ、アヒルだぞ〜…」
「ダーブッ」
同じ方向を見えるようにしてベル坊を抱える。
そして『ベル坊のお遊びボックス』の中から適当におもちゃを取り出した。今日はネジで前へと進むアヒルだった。
「ダ〜…」
キラキラした目でアヒルへと視線を向ける。
そんなベル坊は、やっぱり赤ん坊なんだなと思った。
「…おい、男鹿」
「ん?」
「これは…一体何なのだ」
「何って…風呂?」
言えば、キッと睨まれた。
「あのな、ベル坊が一緒に入りたいって言ったんだって」
「だが…!」
「だからタオル巻いてるだろ?」
いつもなら、風呂は俺とヒルダが交互に入れていた。
今日は俺の当番で、いつものように風呂場へ行こうとしたら。
「ダー!」
「坊ちゃま?」
「ダブダ、ダーブッ!!」
「ベル坊?」
ヒルダの方に腕を伸ばすベル坊だったが、イマイチ何を言いたいのか分からなかった。
再度風呂場に行こうとしたら、ベル坊は嫌嫌するように首を横に振り、ヒルダを指さす。
それを見ていた姉貴が「もしかして3人で入りたいんじゃないの?」と言うものだから、まさか、と思ってきいてみたら。
「ダッ!」
そのまさかだった。
「いい加減諦めろ」
既に一緒の浴槽に入ってる時点で諦めるもなにもないのだが。
「くっ…おい男鹿」
「ん?」
「絶対見るなよ」
「……」
…いや、向き合ってる時点で色々見えてるから。まぁ、バスタオルで隠せるところは隠してるのだけれど。
なるべく見えないようにと体を湯船に沈めて恥ずかしがるヒルダは、柄にもなく可愛い、と思った。
逆効果だっての…
俺も一応男で、まぁ、それなりの反応というものがある。
ただ、今はベル坊もいるしヒルダも嫌がるだろうから何もしないのだが。
諦めた方が自分のためだ、と言い聞かせて、泳ぐアヒルに手を伸ばすベル坊の頭を撫でた。
「さぁ坊ちゃま、今度はヒルダと遊びましょう」
するとヒルダの、どこか吹っ切れた、半ば自棄になった声が聞こえた。
ヒルダを見ると、顔を赤らめながらも『ベル坊のお遊びボックス』から取り出したであろう“ピンク”色のアヒル。そのアヒルもネジで前へと進むタイプのものだ。
「ドブ男が出したアヒルより素晴らしいアヒルです」
「は?変わらねーだろ」
「ふん、お前が選んだアヒルという時点でダメなのだ」
「いやいや、意味わかんねぇよ」
なんだと言うのだ全く…
と男鹿が頭を悩ませてる時、二人の雰囲気がいつもの二人だと嬉しく思うベル坊だった。