特別な品
□止められません。
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「おら、皆席につけや」
授業(と呼べるかは謎)が終わり教壇に聖石矢魔学園の教師である早乙女が、担当である“石ヤバ”の生徒に授業変更のお知らせのプリントを配ろうと声をかけた。
しかし石ヤバ…つまり石矢魔の不良たちが大人しく話を聞くはずもなく、真面目な邦枝や普通の古市しか話を聞いていなかったのだが。
それでもプリントを普通に配る早乙女は流石というか何というか。
手渡されたものをまるで条件反射のように受け取ってしまう不良たちに早乙女が「単純だな」と思ったとかそうでないとか。
とりあえずプリントを受け取ったヒルダは後ろに座る男鹿へ渡そうと自分の分を抜き取ろうとしたら。
「っ…!」
つぅ、と指に一筋の赤。
そしてぷっくりと盛り上がった赤にヒルダは顔を歪ませた。
「ヒルダ?」
動きが止まったヒルダを訝しげて、後ろの席に座る男鹿が覗きこんだ。
「あぁ、すまな、…!?」
男鹿に気づいてプリントを渡そうとしたら、いきなり腕を掴まれた。
しかもさっき指を切った方の腕を。
「おまっ!怪我してるじゃねーか!!」
「いや、こんなのかすり傷…」
「保健室行くぞ!」
「は?ちょ、待っ…」
そして有無を言わさす腕を引っ張られ、教室をでる事になったのだった。
「傷は浅いぞヒルダ!…あれ、本当に浅い」
「だから待てと言ったのだ」
所変わって保健室。
ものすごい力で引っ張られて抵抗できず、結局ここまで来てしまった。
しかし、ここにくるまでに見事に血はかたまってしまったのだが。
「はぁ」
「何ため息ついてんだよ」
「貴様のバカさ加減に呆れているのだ」
こんなかすり傷でここまで大騒ぎするとは。
「一回腹も刺された私だぞ?」
他にもグランドバハムートにあやうく噛み殺されそうになった事とか。
それに比べてなんと小さい傷なのだ。
「そりゃあ、その…」
男鹿が言い淀み、首を傾げた。
実は男鹿が自分に対する感情に戸惑いそして過剰に反応しているのだが、それを知ることはそれからしばらく経ってからの話である。
「と、とりあえず教室戻るか」
「ふむ、そうだな」
何故か焦って早口で言う男鹿だったが、素直に教室に戻ることにしよう。
……数分後、今度は扉に指を挟めて再度保健室へと連れてかれるのだった。
ヒルダ、傷は浅いぞ!!
……はぁ