特別な品

□ひっついてみました。
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「疲れた…」


今日はやけに絡まれる日だった。
ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。しかしワラワラ湧いてくる不良共に、さすがの男鹿も体力の限界で。
最後はフラフラになりながらも帰宅するに至ったのだった。


「さすがに疲れた…寝るぞベル坊」
「ダ!」


テレビには目もくれず、速攻ベッドの中へ入った。
あぁ、これでやっと休める…と思ったら。


「……寒くねぇ?」


冬本番のこの時期。
暖房もストーブもつけてない部屋は寒く、すぐには寝れそうに無い。
さてどうしたものか……あ、そうだ。


「ちょっと待ってろよベル坊」


寒さですっかり丸くなったベル坊をベッドに残し、“もう一つの温熱源”を連れてくる事にした。


「はぁ?何故貴様と一緒に…」
「ベル坊が寒がってんだけど」
「このヒルダ、一緒にベッドに入らせていただきます」


……なんだコレ。本当、面白くねぇ。
さっきまで渋ってた奴が、ベル坊の名前を出した途端OKしやがって。


「早く入らぬか。坊っちゃまが寒がっておられる」
「へいへい」


いつの間にか俺のベッドに入っていたヒルダに適当な返事をして、俺もベッドの中へ。


「…狭い」
「仕方ねぇだろ」
「もっとそっちに行かぬか」
「こっちだってギリギ…うわっ、お前の足冷たっ!」
「む?」


ヒルダの足に触れた足をひっこめたら後ろの壁にぶつけた。


「っ…!!」
「何をしておるのだ」
「冷たすぎて思わず…!」
「…それはすまなかったな」


…やべ、言い過ぎたか。
しゅんとなるヒルダに罪悪感を感じた。
さて、どうしたものか……そうだ。


「っ!!?男鹿!?」
「うっわ冷た」
「じゃあ離せっ…!」
「断る」


今の状況を説明すると、ベル坊はさんで俺とヒルダの足をくっつけているところだ。
触れた最初は冷たかったが、熱が伝わって徐々に暖かくなる。
そしてついでに手も触れると、やっぱり冷たかった。


「じゃあベル坊、一緒に暖めるか」
「ダッ!」
「坊っちゃま!?」


事の成り行きを不思議そうに見ていたベル坊と一緒にヒルダの手に触れた。
それぞれの温もりと冷たさがあったが、徐々に同じ温もりとなる。
少し強ばっていたヒルダの肩も、緊張が取れたようだった。


「ほら、暖かいだろ?」
「ふむ…」
「ダーブッ!」


ベル坊が幸せそうに笑い、それにつられてヒルダも微笑む。
ヒルダの珍しい表情を近くで見れて、たまにはこういうのもアリかと思うのだった。







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