特別な品

□おすそわけです。
1ページ/2ページ


ふと視界に入った“ソレ”。
今まで必要ないだろうと思っていたもの。
しかも何故か自分では無く、あいつが付けている様子が思い浮かんでしまった。
そして自然と“ソレ”を手にとっていた。


「ありがとうございましたー」


店員のお決まりのセリフ。そして“ソレ”はヒモ付きの紙袋に入って、自分の指からぶら下がっていた。


「……」


どこの名前かは知らないが、明らかに女物。
まぁ、買ったものは仕方ない。



「頭でもわいたのか?」


…あぁ、やっぱりこいつにやったのは間違いだった。
先ほど買った紙袋に入った“ソレ”は自室で寛いでいた居候で嫁(仮)であるヒルダの手の中へ。
しかし“ソレ”を買う時ヒルダが付けている想像をしてしまった。
もうこれは自分の中でヒルダの物になってしまった。
だから訝しげに見上げるヒルダの手に持たせた。

…なんだろう、なんか恥ずかしい。

いてもたってもいられなくなって、俺は足早に部屋を出ていこうとしたら。


「…ありがとう、男鹿」
「……どういたしまして」


明日は槍でも降るのだろうか。あのヒルダが…
滅多に見せないヒルダの笑みで顔が熱くなるのを感じながら部屋を出るのだった。






次の日。
学校も終わり家に帰ると、いつものようにヒルダが出迎えてくれた。


「おかえりなさいまし、坊っちゃま」


ただし、ベル坊限定であるが。
ま、さすがに慣れてツッコミはいれず、いつものようにベル坊をヒルダに渡す。
そしていつものようにリビングに行こうとした。


「アゥ?」


ベル坊の声で振り向くと、下を向いて立ち止まるヒルダとそんなヒルダを見上げるベル坊。
どことなく様子がおかしいヒルダに近づくと、ズイッと目の前に見覚えのある物を出された。


「よく分からなかったが」


昨日の礼だ、と言われた。
そして手の中に収まったのは、昨日ヒルダに買ってやった“ソレ”が入ってた紙袋。


「お姉様に聞いて買ってきたのだ」


恐る恐る開ければ、昨日ヒルダにやった“ソレ”と同じものが入っていた。
もちろんサイズは違うのだが。


「…どういうつもり?」
「自分が貰って嬉しかったから」


出来れば付けて欲しいんだ、と言うヒルダ。
そして俺がやった“ソレ”を嵌めた左手指を見せられた。


「意味分かってる?」
「……、意味?」


やっぱり分かってなかったか…まぁ、こいつだしな。


「まぁいいや。…サンキュ」
「…!どう…いたしまし、て」



そして“ソレ”…つまりシルバーリングを紙袋から取り出し、ヒルダと同じ指…左薬指に嵌めるのだった。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ