特別な品

□姉妹と罪深い男
1ページ/2ページ

「いただきます……うげ、マズ」
「じゃあ食うな」
「食わねーとは言ってねぇだろ」
「……!、ふん」
「………」


こんにちは、古市です。
現在昼休みで、親友?悪友??の男鹿とベル坊、ヒルダさんと一緒にお昼ご飯を食べてます。
そしていきなりですが…現在絶賛不幸のどん底です。
ヒルダさんが居て華やかになるはずなのに、何故か心が晴れません。
何故なら…


「…ごちそうさん」
「ふむ、完食したな」


なんなのこのラブコメ!
お互い言葉に出さないから分かりにくいけど、色々と滲み出てるからね!
特にヒルダさん!!
ああもう嬉しそうにしちゃって…!!

昼休みのごはん時、最早自分は蚊帳の外で夫婦の時間を眺めている時間になりつつあった。
……あぁ、虚しい。


「まぁ、可哀想」


誰も居なかった場所から妖艶な声色が聞こえた。ばっと振り返ると、黒い穴みたいなところからゆっくりと出てくる金髪美人のメイド姿の女性。


「え、ヒルダさん!?あ、あれ?」
「ヨルダ…!!」
「ヨルダさん!?あ、ヨルダさん…」


言われてみれば、髪型も恰好も違う。だけど、そっくりなのだ。


「貴様、何しにここに…何をしている」
「はい、アーン」
「なっ…」


ヨルダさんはヒルダさんを無視し、男鹿の前で弁当を広げて食べさせようとしていた。


「…失礼しようか、古市」
「なっ、ちょっと待てヒルッ…んぐ!?」
「美味しいでしょう?」


呼び止めようとする男鹿の口に卵焼きが入り、ヒルダさんは冷ややかな視線でそれを見たあと、今度こそ立ち去ってしまった。


「チッ…おいヨルダ!」
「なぁに?」
「俺は…あいつが好きだ、だから邪魔すんな」
「「へっ!?」」


まさか男鹿からそんな言葉が聞けるとは思わず、俺もヨルダさんもすっとんきょうな声をあげてしまった。
そんな様子の俺たちを見て首を傾げる男鹿だったが、ヒルダさんのことを思い出したのか踵を返す。


「あ、それともういっこ」

男鹿は振り向きざま、こう一言付け足して行ってしまった。



「お前の卵焼き……案外美味かったぜ」


行くかベル坊!と去ってしまい、残された俺たち。
俺は恐る恐るヨルダさんの方を見ると…


「……当たり前、じゃない」


ヨルダさんは見事に頬を赤らめ、立ち尽くしていた。
そして俺の方を見向きもせずに男鹿を追いかけに行ってしまった。


こりゃまた大変な事になったな。


悪友の一言によって始まった悪友争奪戦姉妹対決を見させられるのかと思うと、明日から登校拒否しようかな、と思うのだった。








次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ