特別な品
□いい夢を
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家に帰ってさぁゲームでもしようかと思ったら、ふと視界に入った茶色の物体。
それは自分の机の真ん中に堂々と陣取っていた。
何だこれ…
持ち上げると意外と軽い。
とりあえず開けてみる。
『たつみくんへ』
そう書かれた一枚のカードに、思わず吹き出しそうになった。
た、たつみくん…!!?
思わず寒気が走った。
そして震える手を押さえて折り畳まれたカードの中を見れば、今度こそ吹き出してしまった。
『たつみくんへ
おめでとう☆
この、「ごはん君タオルケット」でいい夢見てね』
「ごはん君タオルケットぉ〜!?」
……改めて茶色の物体を見る。
言われてみれば、折り畳まれたタオルケットはこのくらいの大きさだよな…と思う。
しかし何故こんなものが…
「おぉ、ついに届いたか」
「ヒルダ!?」
驚いた。
気配消しやがってこの女…!!
「ふふ、これでいい夢見れますよ坊ちゃま」
「は?」
ヒルダは未だ胸を押さえる俺を無視して茶色の物体の封を切り、中のものをひろげると、ベル坊が歓声をあげた。
そこには、ごはん君とその仲間、うんこ男爵が横一列に並んだ絵が描かれたタオルケット。
…誰がどう見ても、『ごはん君タオルケット』だ間違いない…
しかし何故ここにこんなものが?
「アニメ最後にごはん君グッズを募集していてな、坊ちゃまが欲しがっておられたから応募してみた」
「で、当たった、と」
「貴様の名前でも当たるのだな」
「てめぇっ…!」
やっぱり人の名前を勝手に使ってやがったか…!
「坊ちゃまと私の名前を使えるわけなかろう?」
「ぐっ…」
「ダ−ブッアイッ!!」
「ん?どうしたベル坊」
背中にいたベル坊が、ヒルダが持つタオルケットに手を伸ばす。
それを見たヒルダは何か気付いたように顔を明るくさせ、タオルケットを広げたまま俺の後ろにまわった。
「ヒルダ?」
「さぁ坊ちゃま。フワフワのごはん君タオルケットですよ」
「え?何してんの?」
「ダァ」
「ダァ、じゃねぇ!」
何故か分からないが、背中から腰まで覆いかぶさったタオルケット。
理由は簡単、ヒルダが掛けたからだ。
「それでは坊ちゃま、おやすみなさいませ」
「ダァーブッ!………すぴー…」
「え、ベル坊くん?ここで寝るの!?」
しかし返ってきたのは穏やかな寝息のみ。
「それでは私は失礼する」
「おい!」
ベル坊を背中に乗っけたままで放置かよ!?
そう思うと腹が立って、自然と彼女の右腕を掴んでいた。
「てめぇも道連れだ」
「は?なん」
ヒルダが言いきることはできなかった。
ぽすん、とヒルダが胸の中におさまったからだ。
「よし、寝るか」
「は?!ちょ…!」
「最近寒いからなー、これでばっちりだな」
「っ……!」
何か言いたそうなヒルダだったが、あえて無視して更に抱きしめる。
ヒルダのぬくもりがじんわりと伝わって、心がじんわりした。
……やべ、眠くなってきた。
もう……寝るかな。
そう決めたら、自分でも驚くくらい行動は早かった。
「おいっ…!」
「じゃ、おやすみ」
「……!……おやす、み……」
ヒルダを抱き上げ、そのままベッドに直行。
もちろん背中に乗っけたベル坊を起こさないようにベッドに入り、俺とヒルダの間に寝かせた。
あったけぇ……
俺たちの体温ですぐ温もった空間に安堵する。
そして、最初は驚いてたヒルダが観念したように、しかし穏やかな笑みを浮かべて眠りについたのを確認して、俺も瞼を閉じるのだった――。