特別な品

□気付いた感情
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聞き流せ、聞き流せ。
これは単に勉強を教えてるだけだ、あの男は馬鹿だからな。
なのに…


「そう、正解!」
「よっしゃ!」


腕を振り上げ、笑顔な男鹿。
そう、これは問題が解けたから喜んでいるのであって、勉強を教えている邦枝に笑顔を向けているのではない。

わかってる、わかってはいるのだが…


バキッ!!


「ちょ、お前シャーペン割れたぞ!?」
「ふん、脆弱な作りだ」
「そーゆー問題じゃねぇだろ!!」


盛大な音を立てたためか、邦枝の方に顔を向けていた男鹿が覗き込むようにしてシャーペン“だったもの”を見やる。

…それだけでちょっと機嫌が良くなった、気がする。
だが、邦枝がおずおずと小さな声で、しかししっかり伝わるように男鹿を呼ぶものだから、男鹿の視線は再び邦枝の方へと向いた。


「「…」」


瞬間、気の強い瞳と目が合った。


「……ヒルダ?」


あぁそうか
邪魔者は……私か。


居てもたってもいられなくなって……


逃げた。
















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