特別な品

□幸せについて考えるのです
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「うっわ懐かし」


それは部屋の掃除をしている時だった。
あまり開かない引き出しの中から出てきたのは写真。
大半が自分をメインとしたものだが。


「人相の悪さは相変わらずだな」
「うるせ」


いつの間に近づいたのか、後ろから顔を覗かせるヒルダ。……特に驚きはしないが。
そのままヒルダは横に座る。触れた肩は暖かかった。


もう一回、写真たちに目を向けた。
どの写真も、カメラに対して睨みをきかせいる。
まるでケンカを売ってるみたいだ。


「ただ身体が大きくなっただけではないか」
「……」
「全然変わってないぞ」


確かに…と自分も思ったが、そんなことはさすがに言えない。
んなわけねーだろ、と言いつつ、睨みをきかせてない写真を探す。

……無いな、こりゃ。

これはカメラが嫌いなのか、元からこんな顔なのか…と諦めかけていた時、一枚の写真が目についた。


「これは…」
「む、私たちが来た時の写真だな」
「うわ、懐かしいな」


それはヒルダとベル坊がうちに来て初めて撮った“家族”写真。
確か親父が撮ろう!なんて言い出して、3人だけで撮った気がする。


「ベル坊が呆けてるぜ」
「なにせ魔界にはカメラというものは無いからな、不思議に思われたのだろう」
「てか俺ら仏頂面だな」


いくら何も関係がない、周りが“家族”だと勘違いする3人の集合写真とはいえ、親役である二人の表情はあまりにもかたい。
姉貴やお袋にブーイングを受けた事も覚えてる。


「あの時は仕方なかったのだ」
「確かに。あの時はなんで?と思ってたし」


むしろ全力で拒否したかった。それでもベル坊の事もあったし、渋々撮ったのだが……

























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