特別な品

□ごっこ遊び
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「オガヨメ?」
「東条…」


あ、やっぱりオガヨメだ、と東条は声のトーンを明るくさせた。
ヒルダも知り合いだからか、緊張を解く。


「買い物帰りか?」
「まぁな」


ヒルダの手にはビニール袋があり、ビニールに引っ付いて透けた豆腐の名前が見えたり、ネギが覗かせていた。


「…夜ご飯?」
「そうだ」


よっしゃビンゴ!と喜ぶ東条に対し、ヒルダは勿体なさを感じていた。

こいつの強さは申しぶんない、しかし性格が…

と思案していると、急に右手が軽くなった。


「うわ、やっぱ重いな」
「ちょ…」
「持ってやるよ。家はどっちだ?」
「……」


やっぱり勿体ない。
心底思うヒルダだった。































「つうか男鹿は?」
「……家にいるが」
「おいおい、嫁さん放っておいて何してんだあいつは」
「全くだ」


嘘をついた。
本当は坊っちゃまと公園にいる。坊っちゃまの要望だ。
公園…それは坊っちゃまが元気に遊んでおられる場所なのだから、一度は行ってみたかった。
しかし公園には『くにえ』がいる可能性があった。
だからいつも行かなかった。
何故くにえが居ると行きたくないのか…それは察してほしい。


「じゃ、俺が“夫役”になってやるよ」
「は?」
「なんか新婚夫婦みたいじゃねぇか?これ」
「……そうだな」


確かに言われてみれば、そう見えなくもない。
若い男女が並んで歩く。
しかも女の荷物を男が持つという、家庭円満な絵だ。


「……よろしく頼むぞ、“アナタ”」
「あぁ、“ヒルダ”」


そして自然と笑い合う。
こいつの朗らかさに当てられたか。

たまにはこういうのも悪くない、そう思ってた矢先…















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