特別な品
□やっぱり俺は、
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「………!!最低だな、貴様」
「最低で結構。俺は」
「……失礼する」
「ちょ、おい……!」
伸ばした手は彼女を掴まえる事なく、空を切る。
……
それが彼女の……
ヒルデガルダとの最後の会話である。
「………はぁ」
本日……あ゛ー…もう数えるのも面倒なくらいついたため息はとどまることを知らず、気づいたらまたため息が出ていた。
「ダァ…」
肩からぶら下がるベル坊もどこか元気が無かった。
…俺のがうつったか?
「どーすっかな、俺…」
こんな状況になったのには心当たりがある。
原因は俺にあるからだ。
だけどもう3日目だ。
いい加減……
「辰巳?あんた、こんなところで何してんのよ」
「姉貴……」
最悪なタイミングだ……
と思ったら、いきなり腕を首に回して締め付けられた。
「ちょ、がっ…」
「はいはい、とりあえず帰るわよー」
「ぐぇっ!!はなっ……」
「今日のご飯は何かしら〜」
「あら、珍しいわね、2人で帰ってくるなんて」
「こいつ公園でブランコしてたのよ?意味わかんない」
「まぁ」
母と姉に笑われたが、そんなものはどうでもよかった。
「…あれ?本当にどうしたの?」
「そういえば、ヒルダちゃんも元気無いのよ」
「………」
ヒルダの話が出て、思わず体が強ばる。
その時姉貴と目が合ったが、特に何を言うわけではなく、お袋との会話もそこそこにリビングの方へと行ってしまった。
ホッと安心したが、お袋から「あんたも早く来なさい」と言われ、また体を強ばらせてしまうのだが。