小説

□真似してみました。
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「なんでだよ……」


夢と同じセリフを吐く。
そこには、ベル坊は居ないという違いこそあれ、東条とヒルダが笑い合ってるという、夢で見た様子にそっくりな光景が広がっていたからだ。


「む?貴様、起きたのか」
「……起きてたら悪いかよ」


自然と声が低くなる。
分かってる。
ヒルダは、いつもは寝坊する俺が今回は早起きだから驚いているだけだと。
だけど、『東条との密会がバレて驚いてる』と勘違いしてしまう。


「よっ、男鹿」


にっこりと、朝からウザいくらいに晴れやかな東条に辟易する。
……なんでそんなにテンション高いんだ……


「じゃ、俺バイトあるから」


そしてまた爽やかに挨拶した後、自転車で去っていくのだった。



「……何をしている?」


戻らぬか、と身長の関係で見上げてくるヒルダの問いには答えず、まるで通せんぼするように目の前で止まる。
ヒルダの眉間にシワが寄り、訝しげなものとなる。


「何話してたんだ?」
「何、とは?」
「惚けんじゃねーよ」


東条と楽しそうに話してたじゃねぇか。
普段は見せない表情を惜しげもなくさらしやがって。


「……知りたいか?」
「知りたいに決まって………」


と言いかけたところでふと思った。

もし、ヒルダと東条が付き合う、なんて話になったら、とか言われたら、俺…


知りたい、ものすごく。
だけど、俺にとって都合の悪い事だったら立ち直れる自信なんて…




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