小説
□古市の悩み
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「邦枝……」
思わず手で顔を覆いたくなった。
ヒルダさんの後を追っていくと、そこには男鹿とクイーン邦枝の姿。2人は噛み合ってない会話をしてるのか、片方は顔を真っ赤に、片方はアホ顔だ。
……って、それよりもヒルダさん!!
「いてっ!?あ゛ぁ゛?何だぁ?」
「……死ね」
「はぁ!?ってちょっと待て!!」
あーあ、やっちゃったよ…
てゆーか気づけよ男鹿!!
ヒルダさんは大事な哺乳瓶が入った巾着を男鹿の頭に命中させ、くるりと男鹿のいる反対方向へ足を進めようとする。
「待てよヒルダ!」
「貴様は坊ちゃまにミルクを…!!」
男鹿はヒルダさんの腕をとって胸の中に閉じ込め、ヒルダさんはそれから逃れようと抵抗する。
え、何これ何の昼ドラ!?
てゆか俺たち居るのになんで抱きしめてるわけええぇ!?
「まずはてめぇが先だ!!」
「……!!」
あーあぁ、ヒルダさん嬉しそうにしちゃって…
ま、ヒルダさんを優先させたからかな?
「おい、俺なんかしたか?」
「………」
だから昼ドラ展開止めてくれ!!
つーかヒルダさん嬉しそうなの気づけよ男鹿!!
「ちょっとあんたたち。何してんのよ。」
「邦枝…?」
「イチャイチャするなら家帰ってからしなさいよ」
「「イチャイチャ!!?」」
いやいやいや、完璧イチャイチャしてたろ、何その驚いた顔は。
「ほら早く!」
「へ?ちょっ…」
そして二人はクイーン邦枝に背中を押されて転びそうになりながらも、階段室へと追いやられるのだった。
「早く…消えなさいよ……」
「クイーン邦枝……」
今の彼女は烈怒帝瑠の3代目総長ではなく、ただの“一人の女”だった。
本当、男鹿ってば罪な男………
ヒルダさんを悩ませてクイーン邦枝を悲しませて…
女好き、を公言してる俺としては辛いものがあるわけですよ。
ま、男鹿は1人だからどっちかが犠牲になるけども…
てゆか、なんで男鹿ばっかり……!!
何故俺にはフラグが立たないんですか!!?
……今の悩みはそんなところです。